2017年6月19日月曜日

空蓮房詩個展、鯨井謙太郒さんのこと




20152月に神楽坂で開催された公演『毒と劔』を観て以来、鯨井さんは、ずっと気になるオイリュトミストであり、ダンサーだった。6/24のイベントでは、展示のある空蓮房のなかで、鯨井さんが踊ってくださる。本番を数日後にひかえたいまも、実感がわかない。

吉岡実氏、野村喜和夫さん、城戸朱理さんをはじめ、舞踏やオイリュトミーと詩が、身体と言葉の境界線をともにダンスする、させる行為について、ぼくは遠い憧れをいだくだけだった。その方法も、きっかけも、なかなか目のまえに醸成してこなかった。

個展のお話をいだだき、酒場で独り自身の詩や「個」について考えをめぐらすと、なぜか、鯨井さんの姿がうかんできてしまうのだった。準備もなにも、文字どおり手ぶらだったが、伝手をたどり鯨井さんに相談してみることにした。

ぼくらは、ほとんど言葉を交わしたことがないのに、鯨井さんは共同制作を快諾してくださった。

そして、晩春。鯨井さんと空蓮房に出向く。まず、泥鰌と鯨料理「駒形どぜう本店」でまちあわせ。サングラスをかけ、頂頭で長髪を団子にした長身の踊り手があらわれる。昼から乾杯しながらご挨拶。鯉の洗いやどぜう鍋をつつき、鯨井さんの故郷の仙台や幼少期のころのお話に耳をかたむける。仙台市育ちの鯨井さんは、鯉や泥鰌といった川魚はほとんど食したことがないらしい。それから、なぜか、子どものころの遊び話-どんな犬を飼っていたか、どんな虫や草をとり、木の実を食べ、ガラス玉や貝殻をひろい、どんな鳥の声を聴いて育ったか−に夢中。仕事の話はせずに。ビールと酒が数本空いたころ、西脇順三郎や吉岡実、池波正太郎の影をもとめて浅草の路地をそぞろ歩く。ぼくは、吉岡実後期の詩「夏の宴」を耳によびおこしていた。

谷口昌良さんをまじえて空蓮房で打ち合わせ。鯨井さんは、展示のある空蓮房、その純白の繭のなかでぜひ踊りたいとおっしゃった。

その後、蕎麦呑みを好むという鯨井さんの言葉にうれしくなり、「並木藪蕎麦」へと。めずらしく閑として、すぐに混みはじめたけれど、海老天ぷら、天ぬき、蕎麦味噌を肴に、一杯。菊正宗樽酒をぬる燗にしてもらい、お銚子を二本、また二本とあけてゆく。現代詩はもとより、アルトー、白秋、三島、折口、柳田、ユング、海外文学の話がはずむ。詩集を上梓したこともある鯨井さんは、読書家。そうした対話のなかで、ふと、鯨井さんは、詩や言葉がダンスやオイリュトミーへと生成する瞬間を感覚的に語りはじめる。詩人として、貴重なお話を聴かせていただいた、贅沢な時間だった。

つぎの仕事に向かうぼくは、浅草線の車内で、鯨井さんと別れる。

こんどは鯨井さんにあれを訊こう、これをもっと話そう、と思うのだが、六時間もご一緒させていただいたのに、ぼくは鯨井さんのプライヴェートについて、なにも知らないことに気づいた。車窓をふりかえると、サングラスをかけた鯨井さんが、もうどこか他者のように遠ざかってゆく。


彼がつかまえた蜻蛉の目玉の色、ちいさな足でかけぬけた谷道。ある子どものもつ記憶の肌触りのほかは。

2017年6月15日木曜日

空蓮房詩個展、6/24イベント完売間近




けさ、ついに「共謀罪」法案が不当に強行可決されてしまった。

スキャンダルで追い詰められた安倍晋三と政府が、完全明白に国民を裏切った日だ。

日本民主主義史の汚点となった、歴史的な日だ。

こんな首相を、ぼくは母国の首相と認めたくない。

きょう、空蓮房におこしくださった方々は、どんなことを感じ、お考えになっただろう。


今回の空蓮房詩個展は、「個」であると同時に、その外への扉となり、複数へ、無数へと、ポエジーの手をつないでゆけたらと願わざるをえません。

そして、その集大成ともいえる6/24のポエトリー・イベント「あなたを未だ知らない」のチケットが、思ったより早く、完売間近となりました。

展示にご来場くださったみなさま、イベントをご予約いただいたみなさま、

ほんとうに、こころから、お礼を申し上げます。

6/16あすいっぱいで、空蓮房公式ホームページにSold Outの告知をだすようです。

チケットは残部僅少ですが、まだあります。ぜひ、早めのご予約を。




上写真は、空蓮房詩個展の謹製サイン本。展示で参加していただいている書家・北村宗介さんから贈られた落款の印影がはいっています。

下写真は、『耳の笹舟』未収録の詩片「やぶからし」直筆原稿。空蓮房すぐそば、蔵前の素敵なステーショナリー「カキモリ」さんで見つけた土佐わ紙の原稿用紙と、おなじくオーダメードで自分だけのインクがつくれる「インクスタンド」のインクを使用。『耳の笹舟』を執筆したファーバーカステルの万年筆と、自分でブレンドした月夜色のインクで清書しました。

双方、受付で販売しています(直筆原稿は一点のみ)。

展示の予約枠も、残りすくなくなっています。

おでかけくださいませ。

2017年6月14日水曜日

空蓮房詩個展、獨協大学のお客さま




空蓮房詩個展に、LUNCH POEMS@DOKKYOでお世話になっている獨協大学教授の原成吉先生と、大学院生の、りささん、にのさん、そして飛び入りで詩人の渡辺めぐみさんが遊びにきてくださった(一番目の写真、左から順に)。

展示は一回につき一名しか入場できない。今回の展示、空蓮房オーナーの谷口昌良さんいわく、お客さんの滞在時間がながい、とか。みなさん、45分から時間いっぱいの一時間は観られてゆくという。

というわけで、待ち時間は、蔵前の新名所となりつつある紙とペン専門のステーショナリー「カキモリ」や、インクの色をオーダーメードできる「インクスタンド 」をのぞく。つかれたら、バレリーナのいるお洒落なカフェ「カメラ」で小憩。

詩個展は、この余白の時間も、じつに愉しい。

原先生は待ち時間に、ちかくの家具屋さんをのぞかれていた。むかしの倉庫を改造した、ニューヨークのフラットふうのお店で、ミッドセンチュリー・モダンのアメリカ家具をおいている。原先生は、一枚板のおおきなデスクや、コーヒーテーブルについて、店員さんに質問していた。

梅雨曇りだけれど、さわやかな風がふいて、紫陽花の頭をなでてゆく。

全員の観覧が終わると、お待たせしました、呑みタイム 

おすすめのワインバー「コントワー・クアン」が準備中だったから、浅草橋のワインバー「フジマル」さんへ。隅田川が見えるテーブルを予約。三階はバーになっていて、隅田川やスカイツリーの夜景が、きれいなんなだとか。ぼくらは、ぶらぶら、隅田川沿いをさんぽ。

「フジマル」さん、食事もおいしかったです。写真は、焼きホワイトアスパラガスのチーズのせ。お会計もリーゾナブルでした。にのさん、りささんは、原先生のもとでアメリカ現代詩を専攻。おふたりとも、展示について真摯に感想をのべてくださる。詩人冥利につきるというもの。

研究について、学生生活について、たのしくおしゃべり。日本の現代詩について質問がでたとき、渡辺めぐみさんは、伝説の女性詩誌「ラメール」や吉原幸子さんについて、貴重なお話をしてくださった。原先生は、眠るまえに、茨木のり子さんの詩集を読むのだとか。

ビールやスパークリングを何杯か、と、ワインを二本あける。グラスをあげ、詩話にうちこむうち、隅田川は黄昏て、あっというまに三時間がすぎた。

2017年6月12日月曜日

空蓮房詩個展、ジュディ・ハレスキさんのこと



きたる6/24、空蓮房にてアメリカから来日している女性詩人、Judy Halebskyさんと、日本語と英語によるポエトリー・リーディングに挑みます。

イベントのタイトルは「あなたを未だ知らない」。詳細は、下記、リンクへ。


6/24のイベントは定員がうまりつつあります。お早めにご予約ください。

ジュディは、いま、カリフォルニアで注目されている若手女性詩人。

第一詩集『Sky=Empty』は新人詩人の登竜門である「the New Issue Prize」を獲得。「the California Book Award」のファイナリストともなった。

第二詩集の『Tree Line』(New Issues, 2014)は、彼女が日本留学で学んだ江戸俳諧や能楽、暗黒舞踏の知識が随所に秘められている。

ジュディの『Tree Line』を初めて読んだとき、ぼくは、新鮮なおどろきにうたれた。カリフォルニアはサンフランシスコの対岸にある〝ファンキー〟な都市、オークランドから飛来した女性詩人の詩のなかでは、松尾芭蕉とエミリ・ディキンソンがじつに自在に、言葉どおり、自然に出逢っている。

なんというか、彼女の詩は、いい意味で、これまでのマイノリティー文学やアメリカ女性詩の既成イメージがない。ジュディの文学的な祖父は李白や芭蕉であり、祖母はディキンソンであり、とおい従兄弟に大野一雄がいて、姉はアドリエンヌ・リッチである。そんな、自由自在、広大で風とおしのいい翻訳空間が、彼女の詩言語の奥にひろがっている。

ドクター・ハレスキは、現在、海外客員教授として今年の9月まで、獨協大学で教えられている。オークランドでは、ドミニカン大学で教鞭をとっているそう。カナダで生まれ育った彼女は、トランプ政権とその支持者たちを心底、憂いている。ジュディはとてもオープンで話しやすい。いつも笑顔で、だれをも魅了するチャーミングな人柄だ。

その詩は、アメリカ現代詩の先端をゆく口語表現で書かれると同時に、東西洋の古典にダイヴしながら、詩人=翻訳者の深いたくらみを、緻密かつ優美に織りあげてゆく。見えない、秘めやかな糸で。ジュディの詩は、国家や人種や性別といった地殻をおし流し、自然からなる諸存在と精神の、その自由な根のからまりあいを垣間見させてくれる。彼女のリーディングは自由の根をたくみに声にのせ弾ませてゆく。ブルージーに、ときにラップしたりして。

とはいえ、ぼくは事前に、このすばらしい詩人を知っていたのではないし、だれかに共演をすすめられたわけでもない。ジュディ・ハレスキとの出逢いはまったく予定外、事件にちかい。来日以前もメールのやりとりはほとんどしなかった。ぼくらはおたがいにストレンジャーで、対話やリハーサルをしながら、すこしずつ、知りあいはじめたところだ。

さて、お気づきの方もいるかもしれない。ぼくがとりくんでいる連作詩「Asian Dream」は、ぼくが十代の一年半をすごしたオークランドの記憶がモティーフになっている。ぼくがかつて住んだのは、ウェスト・オークランドのテレグラフ・アヴェニューという通りなのだけれど、ジュディとパートナーのクリスはいま、ぼくが暮らした家のすぐそばに住んでいるのだとか。そんなジュディとぼくが、国籍や人種や母語や二十年の歳月やらをこえて、ともに詩の朗読をしようとしている。不思議な、偶然だなぁ。

空蓮房でのリーディングに、彼女を招待したのは、なぜだろう。

それは、どきどきするような未知を、招待するためだったのかもしれない。

2017年6月9日金曜日

空蓮房詩個展、蔵前の呑み処1





6/1の杮落とし、ぼくの最初のお客さまは、アメリカはオークランドからきた女性詩人、Judy Halebsky/ジュディ・ハレスキさんと、夫でカリフォルニア大学教授の地質学者Chrisクリスさんのおふたりだった。

ジュディは、6/24のイベントでも共演してくださる。エクセレント・ポエット、ジュディの紹介は、また、あとで。


展示を観たあとは、当然?呑みに。文士や芸術家から愛された浅草、蔵前、ぼくのおすすめの呑み処を紹介しておきます。

まず、写真の一番目と二番目、空蓮房からも徒歩五分のご存知、ドジョウ鍋とクジラ料理の老舗「駒形どぜう 本店」。詩人の西脇順三郎が好んだお店。カリフォルニアからきたクリスに、クジラ、食べる?ときくと、ノー!のご返事。本店の中居さんは、かつては、秋田出身の女性しか採用されなかったとか。理由は、「秋田美人」。そんなところ、江戸東京の粋な遊びごころがかいまみえて、おもしろい。


そこから徒歩三分で、池波正太郎がさんぽ途中に立ち寄った、「並木藪蕎麦」。昼間は、海外観光客が店前でならぶようになった。


居酒屋派には、蔵前最古「駒忠」がいいでせう。ここは、写真家の港千尋、畠山直哉、森山大道さんらも来られたとか。レモンスライスを二枚いれる裏メニューハイ?がドライで、いい。


蔵前からすこしはなれた浅草。ほんとうの浅草は六区周辺というけれど、以前、空蓮房の谷口昌良さんにお連れいただいた、「米久 本店」元祖牛鍋屋のおもむきをのこしていて、よかったなぁ。


鰻なら「小柳」、「前川」かしらん。

そして、〆は、浅草ビューホテルちかく、直木賞作家の青山文平さんがかよう名バー「バーリイ」でせう。


ほかにも、いろいろあるけど、基本はこんなところで。

最後に、ワインバー「コントワー・クアン」を推輓したい。三番目の写真がそうなのだけれど、フランスやイタリア、日本のビオ・ワインを中心にセレクト。そして、ワインはもとより食事がおいしくて、お値段はリーゾナブル(と思う)。グラスワイン二杯に、有機野菜がたっぷりの前菜で、三千円くらい。写真のは、食後だったので、おつまみ程度だけれど、伊豆軍鶏の生ハムと八年熟成のパルミジャーノチーズ。こちらのキッシュは、魔法!


おすすめの食事処や、個展のあとの呑み処は追々ご紹介しますね。

お愉しみに。

2017年6月7日水曜日

空蓮房詩個展、蔵前のおすすめ







浅草から歩いてほどちかい、蔵前。いまも、バンダイ本社が近隣にあるけれど、むかしから玩具、革製品、紙、糸などの問屋さんや工房が多い街だ。

空蓮房での詩個展は、一回につき一名しか展示を観れない。となると、誘いあわせてゆかれた場合は、待ち時間に房主の谷口昌良さんとおしゃべりするか、蔵前さんぽをすることになる。

ぼくのおすすめは、一番目の写真、空蓮房から歩いてすぐのスタイリッシュな文具店「カキモリ」さん。もともと、紙の会社がたちあげたお店で、見目にも美しく、いかにも書き味のよさそうなペーパーや工夫を凝らしたノート、ダイアリーがずらり。手頃な価格の万年筆もならんでいる。文具好きには、たまらないかも。


その、カキモリさんのとなりは、二番目の写真。なんと、オーダーメイドでインクがつくれるお店「インクスタンド」。おしゃれな科学実験室やパフュームのラボみたいな外観。お店のカウンターで色を調合して、自分だけのインクボトルができるのだ。ここも、一見の価値あり。


三番目の写真は、カキモリさん謹製の蔵前地図。無料でもらえるのだけれど、使用されている紙が、すごくいい。これを見ながら、蔵前、浅草、日本橋レトロさんぽへ。

四番目の写真は、カキモリさんで買ったオリジナルのリングノートブック。右斜上方に表紙と頁紙をめくってゆけるのが、便利。LUNCH POEMS@DOKKYO」やイベントのトークのときに、つかおうと思って。

カフェで一休みしたいときは、カキモリさんから徒歩三分くらいの、「カメラ」が、いいかも。


そして、小腹がすいたら、浅草橋ちかくの名ベーカリー「ハルボウズ」。HBともよばれていて、ここのバケットは、すごい。どのパンもおすすめだけど、シュークリームは食べ歩きオヤツにいいです。お土産は、食パンをおすすめ。ミミが二、三日目でも、ふんわりしたまま。ほんとうに美味しい。


空蓮房のあと、スキマ時間に、よい蔵前さんぽを。

2017年6月1日木曜日

空蓮房詩個展、本日開催


いよいよ、きょう。東京蔵前の大変ユニークなギャラリー「空蓮房」で、石田瑞穂詩個展「耳の笹舟-言の繭、音の寺」が、開催されます。詳細は、下記、空蓮房ホームページをごらんください。

http://www.kurenboh.com/

去る5/28日曜日。空蓮房主の谷口昌良さん、映像作家の奥定正掌さん、本展アートディレクターの奥定泰之さん、書家の北村宗介さん(上写真、左から)そして、ぼくは、展示の設営と最終確認を、終了。

北村宗介さんの、優美な迫力と繊細さをあわせもつ書作品。

奥定さんの、シャープかつセンシュアル、さらには、こころくすぐる企みと仕掛けにみちた、アートディレクション。

ふたつの他力が、空蓮房内にポエジーをときはなち、まったく新たな世界を静かに渦動させて、迫ってくる。じぶんでいうのもなんですが、まさに他力本願。衒いなく、本心から、観ていただきたいと思える展示になりました。

じつは、ぼくも『耳の笹舟』を執筆した、純銀ウッド巻き軸のファーバーカステル万年筆で、直筆参加しています。ただし、展示空間を一見しても、わからないはず。さて、ぼくの直筆参加は、どこにあるでしょう?

杮落としの本日は、6/24のイベントにご出演いただくアメリカはオークランドの女性詩人Judy Halbsky ジュディ・ハレスキさんと、夫のChris クリスさんときました。これから、蔵前~浅草さんぽをして、池波正太郎もさんぽ途中に寄った「藪」で蕎麦呑みか、鰻「小柳」で一杯。

個展、イベントとともに予約がうまってきているので、お早めにお申し込みください。

ぜひ、ご来場ください!