2019年6月21日金曜日

『Asian Dream』のJazzたち:「Slang」、「Afro Blue」、「Map of the World」、「34 Skidoo」



五月末に刊行された新詩集『Asian Dream』(思潮社)に登場するジャズたちについて触れたい。

 写真のCD、前衛サックス奏者のスティーブ・コールマン(Stieve Coleman)率いるStrata Instituteのアルバム「C-I-P-H-E-R S-Y-N-T-A-X」(BAMBOO)。詩篇「Slang」は、その一番最初の曲。ちなみに、ジャケットには、スティーブによる「is a dialect of the M-BASE language」という注が付されている。
 M-BASEとは、これも、スティーブが編みだした造語で、多文化のリズムをベースにした音楽、というムーブメント。70年代以降のアフロ・アメリカン文化では、体制側の言語によらない、独自の造語をアフロ・アメリカン・コミュニティーに流通させることで、文化、言語の独立を多様な姿で獲得しようとしてきた。このことは、ロック、ヒップホップの歌詞、グラフィティやストリート・カルチャーにも多大な影響を与えてゆく。
M-BASEは、ジャズを母体に、ロック、ファンク、ラップはもとより、キューバ、カントリー、民族音楽、多旋律のクラシック、ストリートの雑踏など、あらゆるリズムを横断しつつそれらをマクロにベースにした、新たなアフロ・アメリカン音楽を模索しはじめたのだった。
 「C-I-P-H-E-R S-Y-N-T-A-X」は、そんな新しい波動をキャッチして世界に送りだしていたBAMBOOレーベル(残念ながら、いまはない)からリリースされて、90年代ジャズの始動を飾ったアルバムだと思う。以下、リンクをしておきますので、ぜひ、一聴を。

Slang

さて、同アルバムにはブルックリンのスラムを意味する「Bed Stuy」(ベッドスタイと発音)という曲もある。「Slang」もそうだけれど、スティーブとグレッグ・オズビーのアルトサックスのソロのかけあいは、正統派ジャズの即興演奏ではなく、もはやラップのそれにちかい。

Afro Blue」は、ご存知、ジョン・コルトレーン(John Coltrane)の名曲。マッコイ・タイナーのピアノが、やばい。

Map of the World」は、同名の映画の音楽を担当したパット・メセニー(Pat Metheny)のサントラアルバムから。

34Skidoo」は、ビル・エヴァンス(Bill Evance)のオリジナル・ナンバー。ぼくは、ずっと、一昨年逝去したビル・エヴァンス・トリオの個性的な名ドラマー、ポール・モチアン(Paul Motian、ちなみにアメリカではモシャンと発音)のアルバム「ビル・エヴァンス」(BAMBOO)のヴァージョンを愛聴しているのだが・・・あれ?消えちゃってる。ポール・モチアン・バンドのカヴァーは、もっとロックぽく、切なく、かっこいい。同アルバムは参考までに、こちらも名曲中の名曲「Turn Out the Stars」をリンクしておきます。
34 Skidoo」(オリジナル録音)

「パリス・コンサート」収録の「34 Skidoo
(聴き比べのため、エヴァンス本人の演奏では一番好きな録音)

Turn Out the Stars

詩集とともに、お楽しみください。

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