2019年9月27日金曜日

韓国、済州島へ





   思いたって、飛行機にとびのった。

 韓国の済州島へ、短い旅をしてきました。左右社WEB連載の紀行エッセイ「詩への旅」の取材旅行もかねて。

 ここ数日、きゅうに連絡がつかなくなってしまったと思います。関係者諸氏には、ご迷惑をおかけしました。

 オルム(側火山)の島の荒々しくも雄大な自然と海にめぐまれ、韓国の新婚旅行のメッカであり、韓流ドラマのロケ地としても有名な済州島。初めて旅したけれど、すばらしい島と人の時間でした。

 済州島のみなさんにも、とても、とても、よくしていただいた。おとなりどうしの国なのだから、ぼくたち、韓国人と日本人は、末永く仲良くしてゆきたい。

 今回の旅については、11月掲載の「詩への旅」に書く予定です。

 どうぞ、おたのしみに。

2019年9月21日土曜日

九月の詩書 野村喜和夫訳著『ルネ・シャール詩集−評伝を添えて』



 ちょっとまえに、自分にとって宝物になりそうな翻訳詩集をご恵送いただいた。

 詩人の野村喜和夫さんが新訳された『ルネ・シャール詩集−評伝を添えて』(河出書房新社)だ。ぼくは、長年、神保町の田村書店でもとめた、一九五八年刊行の窪田般彌訳『ルネ・シャール詩集』(海外の詩人双書 晶文社)を愛読してきた。吉田素子訳『ルネ・シャール全詩集』も、日頃からページをひらいている。

 野村訳は、これまで、意味がつうじなかったり違和感をおぼえる、もしくはポエジーとしてはかえって説明的にすぎるなど、詩的に言葉が骨折していた箇所が見事に整骨されてい、読みやすい。この整形手術により、詩の筋も正常にはたらき、詩語の肉と肌もほんらいの色艶をとりもどすようなのだ。


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もっともまっすぐな時間、それは果物の仁が、その強情な持続から迸り出て、おまえの孤独を転移させるときだ。
(『眠りの神の手帖』より)


 新訳シャールの言葉は、野村さんがふだん書かれる詩の言葉とも微妙にちがっていたり、同一に接近したりして、興味ぶかい。
 新研究を織り交ぜての「評伝」により、シャールの生涯の全貌と作品の位置づけも、より鮮明になっている。フランス戦後詩、ポスト戦後詩の巨星にして、神秘的な「断章」の詩人がこれから若い読者にもどう読み継がれていゆくのか、たのしみだ。

とまれ、ぼくは窪田訳にもふかい愛着がある。研究者の訳は、詩人の訳とはちがうのだろう。でも、あのちょっとごつごつした詩語の読感が、なんともいえない魅力を付与している。

翻訳のポエジーは、だからむずかしいし、おもしろい。

2019年9月16日月曜日

白秋の茶碗酒



 残暑の渋谷で、左右社WEB連載「詩への旅」でお世話になっている担当編集者の東辻氏と呑む。
 道玄坂にある「駒形どぜう 渋谷店」で、納涼に、どぜう鍋でもつつこうという。若い読者の方のために一言添えれば、どぜう、は泥鰌のことです。

 その日の気温は、台風一過のかんかん照り。都内では気温摂氏三七度だった。当日、ぼくは、銀座で食ミニコミ誌に寄せるエッセイの打ち合わせがあり、つぎは神保町へ。都内の各所に立ち寄るたび、あまりの暑さのため「銀座ライオン本店」でマルエフ、「ランチョン」でマルエフ黒ビールと、老舗ビアバーめぐりのような一日になってしまった。

 そうして、渋谷。すこし、はやめに到着したので、「黒田陶苑」に寄ってみる。近現代陶芸の酒器展をやっていたので。おめあては、辻清明の絵唐津盃。たちぐい呑みは、ゆるぎない線ながら、懐深いおおらかさを感じさせる姿。雪色した自然釉のかかる枇杷色の肌に、抽象的な文がてんてんと。小山冨士夫の薫陶をうけ、『ぐいのみ』という著作もあり、酒器コレクターでもあった辻清明の作は、酒党にとっては魅力がある。金銭の算段もついたので、購入を希望するも、展示販売前に売却済み、だそう。どういうこと?

 写真は、かわりに求めた内田鋼一作の朽木手湯呑。冷房のきいた店内で、東辻さんに「詩への旅」の自筆原稿コピーを手わたし熱いどぜう鍋をつつきつつ、身請けしたばかりのこいつにとぷとぷと酒を注いで茶碗酒。お銚子が四、五本あくと、ぼくの飲み方をみていた駒形の女将さんが、「あらまあ、どぜうで呑むのにぴったりですけど・・・失恋でもしたの?」。

2019年9月6日金曜日

左右社Web連載「詩への旅」第四回が掲載




田村隆一につづき、今回は、戦後詩を代表する詩誌「荒地」の詩人北村太郎です。詩人が晩年を暮らした横浜が舞台。

 下記アドレスより、ぜひ、ご一読ください。

http://sayusha.com/category/webcontents/c21

 写真は、ありし日の横浜と、エッセイにでてきた野毛の老舗バー「R」のグラタン。エッセイ本編では、大人の事情あって、掲載できなかったので。

 あわせて、おたのしみください。