2019年12月31日火曜日

本年もお世話になりました





 師走は、箱根、鬼怒川、中央アルプスと、山辺にばかりいっていた。やっと、帰宅し、たまった原稿を片付けたら、こんどは家の大掃除。そして、年賀状。
 来年の干支は、ねずみ。毎年恒例の一字書は、いろいろな書体の「子」を書いてみた。


 大晦日の今朝は、おせち作り。酢蓮、蕪のふくみ煮、近江市場のするめイカは、松前漬につかう。

 本年も、ほんとうに、沢山の方々にお世話になりました。
 一月の流響院、ごだん宮ざわさんでの「H」(アッシュ)京都撮影にはじまり、二月からは左右社WEBで連載エッセイ「詩への旅」がスタート。三月と九月には学習院大学でのリーディングとトーク、春はフェリス女学院大学での講義。秋は早稲田大学での講義、今年から京都大学での講義もはじまった。そして、一年間の休止後に、獨協大学英語学部主催「LUNCH POEMS@DOKKYO」もリブートした。

学生のみなさん、いつも、ありがとう!
 また、詩人ヤリタミサコさんにお誘いいただき、写真家の谷口昌良さんとともに出品した「ヴィジュアル・ポエトリィ・イン・パリ」展。マルティーナ・ディエゴさん、永方佑樹さんをはじめ、素晴らしき詩友たち、踊り手レンカさんと現存する日本最古のジャズ喫茶ちぐさで開催した「Poetry and Jazz and Night」。最後は、慶應義塾大学で開催された日本英米文学会関東支部シンポジウム、レンカさんとのデュオ・プロジェクト「K=A=E=A=I」。

 そして、なにより、五月末には新詩集『Asian Dream』が思潮社から、一年の編集期間を経て刊行された。思潮社の総編集長高木さん、編集の出本さん、稀代のブックデザイナー奥定泰之さんに、あらためて、深く感謝を。

 新年からは、鬼怒川金谷ホテル誌での連載がはじまり、気鋭のデザイン・カンパニーStoopa Ltd.の全面的な協力をえて、二宮豊氏を副編集長に、念願の国際ポエトリーサイトの立ち上げもはじまる。ランチポエムズにも、新たな展開がありそうだ。

 今年も、このブログをお読みくださり、ほんとうにありがとうございました。

 どうぞよいお年をお迎えください。

2019年12月28日土曜日

越百山へ




越百と書いて、「こすも」と読む山を、ご存知だろうか。

長野県駒ヶ根市にある中央アルプスの山。ぼくは、いま、この山の麓にかよいながら詩作を試みている。

新宿から、高速バスで約四時間。駒ヶ根バスターミナルで降車して、タクシーで宿「二人静」へ。この宿からは、中央、南、両アルプスの雄大な景観が愉しめるのだった。

宿に着いたら、まっさきに、温泉。車中での長旅の疲れをじっくりと癒す。
太田切川の川辺にある宿の、無色透明な湯は、じつにやわらかで、全身どころか喉まで潤う。保温力、保湿力も抜群だ。
風呂上がりは、名水で醸す「南信州ビール」のペールエールで汗をひかす。
壁一面の窓に、甲斐駒ケ岳や仙丈ケ岳などの雄大な山容が、いっぱいにひろがっていた。白銀の峰々が夕陽をあびて、つぎつぎ、ワインレッドの詩篇へと燃焼してゆく。

夕食は懐石料理。そのあとは、宿のバーへ。ちかくのマルス蒸溜所の長野県限定ウィスキー「信州」を、山清水の氷で割って呑む。

わが銀軸のボールペンとツバメノートをとりだし、深夜まで詩を綴ったのだった。

2019年12月17日火曜日

Duo Project「K=A=K=E=A=I」@慶應義塾大学レポート

 


関根路代先生


左 花を贈られるレンカさん


 さる12/14土曜日、英米文学会東京支部大会 シンポジウム「ポエトリーリーディングの現在位置」が開催され、ぼくと、素晴らしき踊り手レンカさんがお招きいただいて、ポエトリーリーパフォーマンスをさせていただいた。

    シンポジウムは、関根路代先生によるアメリカ詩における朗読の歴史からはじまった。つづいて、高橋綾子先生によるアメリカ女性詩人アン・ウォルドマンの朗読とテクストの関係性、斎藤修三先生によるF・チョイをはじめとするアメリカ・マイノリティ詩人たちの朗読についての発表。チョイの詩を詩誌「て、わたし」で訳された詩人のヤリタミサコさんと詩人の山口勲さんも観客席で見守られていた。
    動画ではあったが、アン・ウォルドマンのリーディングは圧巻。どれも素晴らしい発表で、とても豊かな時間をすごさせていただいた。

   そんな、いま、アメリカの第一線で活躍するパンチのきいた詩人たちのポエトリーリーディングのあとでの出演。かなりプレッシャーをかんじつつ、ぼくとレンカさんの、詩と踊りのデュオプロジェクト「K=A=K=E=A=I」がはじまった。
 まず、レンカさんによるソロ。ステージでかすかに重心をずらしつつ、客席の一人ひとりと目線をあわせてゆく、というソロだ。ほとんど踊らないことで踊る、のに、強烈なインパクトがある。
   その、ソロをうけて、ぼくは新詩集『Asian  Dream 』から朗読。レンカさんが、詩の言葉を踊りによって、いまここの時間と空間に紡ぎなおす。

    そのあとは、いよいよ、ぼくらの「K=A=K=E=A=I」がはじまった。ぼくがレンカさんの動きを即興詩へと綴り、そのフレーズをレンカさんがさらなるムーヴメントへとつれだす。
    最初のレンカさんのソロを観て、ぼくのこころはすでに定まっていた。今回の「K=A=K=E=A=I」のモティーフは、不動と動、その波間をただよう無為のトポロジー。ぼくの最初のフレーズは、「いまだ到来しない無為を漂え」だった。
   かけらのような、俳諧のような詩のフレーズがうみだす波動と、レンカさんの踊りの波動がどこかで出逢い、無為の三角波になって漂いだす。
   最後のフレーズは、「音絶えた言葉のホーン   そのミュート  沈黙が踊りでてゆくような」だったとおもう。
   レンカさんの肉体の漣が、しだいに止み、それでいて、なにか言葉にならないエネルギーをみなぎらせてゆく。まさに、沈黙と身体が紙一重で舞台にとどまるような、フィナーレだった。

   ぼくらのあとは、関根路代先生のウォルト・ホイットマンの朗読についての発表。「声と声のかさなりの果てに、音が見えるようになる」という発表に、背筋が、ぞくり。
   最後は、関根先生の司会で、高橋先生、斎藤先生、ぼくによるトーク。このトークも、ぜひ、活字におこしてもらい、文芸誌に持ち込みたい。

   そのあと、出演講師のみなさん、ご来場くださった、原成吉先生、遠藤朋之先生、小川聡子先生、金澤淳子先生、山中章子先生、車先生、林南乃加先生らとともにパーティへ。二次会は居酒屋で。学者のみなさんからの、さまざまな感想、ご指摘を愉しみながら、ビールとワインと酒の夜は更けてゆくのだった。

   レンカさん、関根路代先生、高橋綾子先生、斎藤修三先生に深い謝意を。運営をしてくださった、杉本先生、金澤先生、そして慶應義塾大学の大学院生のみなさん、ほんとうに、ありがとうございました。

    そして、シンポジウムに参加くださったみなさまに、深く深く、御礼を。

2019年12月11日水曜日

Duo Project「K=A-K=E=A=I」慶應義塾大学で開催


Photo (C) Keita Ikeda

詩とジャズのイベントをおえたとおもうまもなく、新イベントが、12/14土曜日に開催されます。

慶應義塾大学で開催される日本英米文学会シンポジウムにお招きいただいての、踊り手レンカさんとのDuo ProjectK=A-K=E=A=I」。

本ホームページ「News」欄でも、すでに告知しているので、ご覧ください。「ちぐさ」でのコラボレーションから生まれた試みです。

ぼくらの持ち時間は、30分。
そのなかで、新詩集『Asian Dream』から朗読と踊りのインタープレイ、そして、即興詩と踊りの「かけあい」をお愉しみいただこうとおもう。

今回のシンポジウムは、会員以外のどなたでも観覧できるとのこと。
研究発表は、新鋭のW・ホイットマン学者の関根路代先生をはじめ、高橋綾子先生、斉藤修三先生など。ホイットマンからアメリカ現代の詩人たちまで、「声で書く」詩人の系脈が立ち現れてきそうで、当事者のぼくもすごく愉しみです。

 ぜひ、ご来場ください。

2019年12月5日木曜日

「Poetry and Jazz and Night」レポート










All Photos (C) 池田 敬太 Keita Ikeda

(写真は上から:レンカさん、石田瑞穂。渡辺めぐみさん。マルティーナ・ディエゴさん。永方佑樹さん。出演者のみなさん)


 横浜は野毛に現存する、日本最古のジャズ喫茶といわれる名店「ちぐさ」で開催された、新詩集『Asian Dream』刊行記念イベント「Poetry and Jazz and Night」。盛会のうちに幕を閉じた。定員25名のところ、40名近いお客様にご来場いただき、立見のでる満員御礼でした。心から感謝を申し上げます。

 「ちぐさ」にも捧げられた本イベントのタイトル、Poetry and Jazz and Night」の由来は、ジャズファンの方なら、お気づきだろう。ビル・エヴァンスとスタン・ゲッツの名演のある「You and Night and the Music」からのもじりである。「ちぐさ」創業者の吉田衛さんは、生前、ビル・エヴァンスと昵懇の仲だった。出演詩人であるぼくらの控室には、なんと、ビルの直筆サインがはいったポートレートが架けられていた。

 では、当日のセットリストを、以下、そのまま添付しておこう。

Poetry and Jazz and NightTonight’s Poets Lists  30/11/2019

二宮 豊 Yutaka Ninomiya
with
Herbie Hancock and Head Hunters, “Vein Melter” from Head Hunters1973.

田上 友也 Yuya Tagami
with
Jim Hall & Bill Evans, “I Hear A Rhapsody”, “Romain” form Undercurrent (1962).

関 中子Nakako Seki & 広瀬 弓Yumi Hirose
with
 Dave Brubeck, “In Your Own Sweet Way” fromThis is Pat Moran (1957).

佐峰 存 Zone Samine
with
Modern Jazz Quartet, “Pyramid” from Pyramid (1960).

渡辺 めぐみ Megumi Watanabe
with
Bill Evans, “Waltz for Debby” from Waltz for Debby (1962).

永方 佑樹 Yuki Nagae
with
Charles Mingus, “Moanin’” from Pithecanthropus Erectu(1956).

マルティーナ・ディエゴ Diego Martina
with
Chet Baker, “Almost Blue” and “I’m a Fool to Want You” from Let’s Get Lost (1987).

トーク「詩とジャズ、夜の声たちへ」
石田瑞穂 マルティーナ・ディエゴ 永方佑樹

石田 瑞穂 と レンカ Mizuho Ishida and Renka
with
Gary Thomas, “Trapezoid” from Code Violations (1988).

 詩人の広瀬弓さんも急遽参加し、Sit-innはおおいに盛上がった。ちぐささんの音響はすばらしくて、瞑目して聴きいっていると、すぐそばでミュージシャンが演奏しているような気分になる。まるで、名盤からぬけでてきたような臨場感あふれる伝説のジャズメンたちの音と、詩人たちも、観客のみなさんも、スリリングなインタープレイ(対話)を存分に愉しんだのだった。そして、ふたたび、ジャズファンならお気づきのように、このセットリストの通奏低音が、ビル・エヴァンスなのである。

 昨年、第一詩集『元カノのキスの化け物』が話題をよんだマルティーナ・ディエゴさん、詩集『不在都市』で今年度の歴程新鋭賞を射止めたばかりの永方佑樹さんも、すばらしいセッションで観客をわかせた。
 ディエゴさんは、チェット・ベイカーのトランペットにのせ「一人酒」といった詩を聴かせる。そして、チェットが儚くささめくように歌うパートでは、観客とともに黙って耳をすまし、ショットグラスを傾ける。ディエゴとチェットによる、こころに沁入る、極上のインタープレイだった。
 たいして、永方さんは、チャールズ・ミンガスの太く重いアクースティック・ベースにのせて、『Asian Dream』の任意のページを即興的にひらき、任意の詩行を即興的に高速で読むリーディング。ミンガスの人間的にも音楽的にも強烈な個性と、オリジナリティを介在させない永方さんの非個性が、火花を散らしてゆく。これも、いまだかつてない、ユニークなセッション。

 トーク後は、ぼくとレンカさん。沈黙のなかで、観客席から黒革のライダース・ジャケットとサングラスといういでたちのレンカさんが、ゆるやかにたちあがり、踊りでる。音楽はまだない。夜と街のノイズに溶けこんで踊るレンカさんに、ぼくが詩篇「Nomad」を声でとどける。それから、音源をつかい、ぼくがレンカさんの踊りを観ながら即興詩をつくり、レンカさんがその詩の言葉にレスポンスする、初めての「K=A=K=E=A=I」を試みた。
ちぐさの夜のなかを、声と肉体の音叉が生んだ波動がとおりぬけてゆく。「夜の羽衣が やさしく ぼくらの文字をくるんでくれた」というぼくの即興のあとは、レンカさんが、長く響きつづける余韻のように踊りつづける。音絶えた詩のホーン、そのミュートさえ、ポエジーになってゆく。

フィナーレは、レンカさん、詩人のみなさん全員と、ちぐさのスピーカーのまえで挨拶。

観客のみなさんに改めてお礼を。そして、共演してくださった、詩人のみなさん、秀逸なDJを務めてくださったちぐさの笠原ディレクターとスタッフのみなさんに、深く、深く、感謝を。

LPのなかから、ぼくらに力を貸してくれた、ジャズメンたち。日本ジャズの立役者にして「ちぐさ」創業者の吉田衛さんに、こころからの敬意と謝辞を。

2019年11月26日火曜日

いよいよ、今週土曜日、「Poetry and Jazz and Night」!



  横浜は野毛に現存する、日本最古のジャズ喫茶といわれる名店「ちぐさ」。いよいよ、今週土曜日、拙新詩集『Asian Dream』刊行記念イベント「Poetry and Jazz and Night」が、夜19時から開催されます(18:30開場)。詳細は、下記、「ちぐさ公式ホームページ」をごらんください。


ちなみに、うえのすてきなポスターは、「ちぐさ」イベント・ディレクターの笠原さんが、手ずからつくってくださったもの。感謝、感激です。

 関東屈指の呑み屋街、野毛で、一杯ひっかけ、食事してから、ジャズ・バーにくる感覚で、ぜひ、ご来場ください(ちぐささんに、軽食はありますが、本格的なディナーはありません)。ドリンクはオーダーしていただきたいのですが、入場料は、なんと、無料。予約制ではないので、混雑も予想されます。はやめのお越しを。

 ここ数日、飛び入り朗読にエントリーしてくださった秀逸な詩人の方々、ゲストの永方佑樹さん、マルティーナ・ディエゴさん、踊り手のレンカさんと、当日、朗読とセッションするジャズ・レコードをうちあわせていた。みなさん、初めてのジャズLPとのセッションに、とても意欲的だ。

その朗読へのアプローチ、多様なアイディを聴いていると、ワクワクしてくる。さすが、詩人たち、というか、たんに、ジャズにあわせて詩を朗読するというのではなく、「ちぐさ」という歴史ある名店とそのアナログ・レコードたちと対話(まさにインタープレイ!)するかのよう。
当事者のぼくだが、どんなイベントになるのか、こころから愉しみ。すごく、いい、ポエトリー&ジャズ・パーティーになりそうです。

当日は、出演詩人たちによる詩集のサイン会もあります。

ぼくも、ちぐさイベント記念バージョンの『Asian Dream』を持参する予定です。ぜひ、ぜひ、お越しください。

2019年11月23日土曜日

「LUNCH POEMS@DOKKYO VOL.14」マルティーナ・ディエゴさんが出演



 第14回をむかえた、「LUNCH POEMS@DOKKYO」。今回は、日本に在住するイタリア人詩人、マルティーナ・ディエゴさんをおむかえした。

 ディエゴさんのプロフィールや、当日のイベントの模様を、実行委員会の学生さんたちが公式ホームページで紹介しているので、ぜひ、ごらんください。


 日本の大学に留学経験もあり、ある意味で、ダンテのように故郷をすてて東京にとどまり、詩を書きつづけている、漂鳥のような詩人マルティーナ・ディエゴ。ぼくが知るどんな〝ガイジン〟よりも日本語を流暢に話し、書く詩人。谷川俊太郎氏の詩や夏目漱石の俳句のイタリア語訳者としても知られるディエゴさん。その朗読と詩話は、最初から最後まで完全に日本語で、イタリア語も英語もでてこない。あたたかい人柄とエネルギッシュな話術で、ぐいぐい学生たちを惹きこんでゆくのだった。
 詩は人をあらわす、かどうかはさておき、ディエゴさんが醸す場のエネルギーは、彼の詩ととてもよく似ていた。

 第一日本語詩集『元カノのキスの化け物』から、「一人酒」と「悲しむ隙間の他に」を朗読してくださる。「月の電気の影に奪われて帰って/鍵の騒音と共に一人部屋に入る」(「一人酒」より)という、ネイティブの日本人詩人でも書けそうにない、独特の響きをおびた日本語の詩行が、ディエゴさんの持ち味。彼は、母国語のイタリア語から詩を日本語へ翻訳したのではなく、最初から日本語で書きはじめたという。

ディレクターとして、事前に「イタリア語でも朗読してほしい」と、ディエゴさんには依頼していた。だが、なんと、詩人からは「いまのところ、私の詩は日本語でしか表現できないんです」との返答。たしかに、『元カノのキスの化け物』を母国語で書けば、イタリア語と日本語の音叉から響く不思議なポエジーはかないそうにない。たとえば、「ただいまのこだまが聞こえないこと」というフレーズも、日本人には自然に聴こえる音とリズムでも、ディエゴさんが朗読すると、イタリア語独特の長くて舌がからまるような長母音と破裂音の連なりが効いていて、ラップみたいに聴こえる。

 最後に、ディエゴさんは詩篇「新里」を朗読。この字にも、ふるさと、とルビがふられる。ディエゴさんは、日本での失恋の痛手と海外生活の疲労感をのりこえるためにも、『元カノのキスの化け物』を三ヶ月ほどで一気に書き上げたという。ふるさと、とルビがふられた「新里」は、そんなディエゴさんが、いま、東京に感じる居場所だ。イベント中、『元カノのキスの化け物』をして、「たくましい詩が書きたかった」とくりかえし述べた詩人の姿が印象的だった。

ハイブラウな詩的実験と、ディエゴさんが私淑するアメリカの酔漢詩人チャールズ・ブコウスキーのナイーヴが混淆してうまれる魅力。日本現代詩のシーンにとらわれず、世界現代詩の海へと漕ぎだすディエゴさんの「たくましい詩」を、これからも注目してゆきたくなるイベントだった。

 マルティーナ・ディエゴさん、ほんとうに、ありがとうございました。

2019年11月19日火曜日

「Poetry And Jazz And Night」、sit-inn(飛び入り朗読)の〆切




 きたる11/30に開催される、拙の新詩集『Asian Dream』刊行記念イベント、「Poetry And Jazz And Night」まで、あと十日。

かねがね、募集していました、飛び入り朗読の参加者が、決定しました。

二宮 豊さん
田上 友也さん
関  中子さん
佐峰 存さん
渡辺 めぐみさん

 以上、定員越えの、五名の方がエントリーしてくださいました。ありがとうございました。結果的に、16名の方に
お申し込みをいただきました。が、先着順、ということで、大変申し訳ありません。
 ゲストでお迎えしてもおかしくない、すばらしい詩人たちのご参加。
 こころから恐縮ですが、、盛り上がりそうです!
 
 Sit-inn参加募集は、これをもちまして、〆切させていただきます。

 11/30の夜は、横浜「ちぐさ」に、ぜひ、お越しください。

2019年11月16日土曜日

「第14回 ヴィジュアル・ポエジィ・パリ展」に出品


「しの傷」原稿の一部



 東京は蔵前にある唯一無二のギャラリー「空蓮房」を主催する写真家、谷口昌良さんと、視覚詩作品を共創していたことは、以前、書いた。その視覚詩作品「しの傷 Ⅰ」と「Ⅱ」が、完成。
今日からパリで開催される「14回 ヴィジュアル・ポエジィ・パリ展」会場へ、無事に郵送されていった。

 展示の詳細は、下記のとおりです。お近くの方や、パリにおいでの方は、ぜひ、ぼくらの代わりに、ご覧になってあげてください。

14回 ヴィジュアル・ポエジィ・パリ展 
会期 20 1 91116()~127(休廊日は日曜日 
画廊 Galerie SATELLITE
7 rue Franc
̧ois-de-Neufchâteau, 75011 PARIS FRANCE (tel) 01-43-79-80-20  地下鉄ヴォルテール駅より徒歩4分。

 谷口昌良さんとぼくの共同作品は、シンプルにいうと、谷口さんの写真作品のうえに、ぼくが詩を書くというものだった。もちろん、それだけでは、視覚詩でもなんでもない。

 谷口さんの写真作品は、静岡の三保松原で撮り下ろされた連作写真。視力の弱い谷口さんが眼鏡をはずすことにより、ピントをあわすことが不可能になったアナログカメラで撮影した松、海、空、光は、じつに不思議かつ不可解な光彩と陰翳をゆらめかせる。偶然の引力、手と機械の織り成す無意識が、幽玄、としか言いようのない光景と物象を印画紙に潜ませる。白隠の書のような、と、写真家でありつつ僧侶でもある谷口さんは、いうのだが。

 たいして、ぼくは、言語をふくむ世界の諸存在を「書き撮る」ことへの思索とも読める、古韻を駆使した一行詩を二片書いた。双片の一行詩は、各詩の中心にある平仮名「し」のところで、垂直と水平に交差している。さらに、詩作品を二宮豊さんに英訳していただいた。

 当初は、特注の極厚アクリル板の底に谷口昌良さんの三保松原の写真を焼着、アクリルの表にぼくが自筆で、十字路のような形式の一行詩を書く予定だった。そして、アクリル板の写真は二点制作し、一点は日本語詩、一点は英語詩とするはずだった。アクリル板の中間で、詩の文字が写真の不可能な消失点へと落下する飛影を、視覚詩とする計画だったのである。

 ところが、この視覚詩の計画から、ぼくらの共同作品は最後の土壇場でおおきく変貌を遂げてしまう。というか、まったく別のポエジーへと転生してしまった。ゆえに、ぼくらの共同作品は、もはや視覚詩からも外出してしまったのかもしれなくて。

 では、実際の作品はというと、パリに行ってご自身の肉眼で観ていただくほかはありません。

ただ、谷口昌良さんとぼくは、今回の共同制作によって、新たな創造の手応えを感じてもいる。
これを手がかりに、もうすこし、おたがいに深く省察と実践をかさね、2021年春には新プロジェクトとして、日本でも公開できればと考えています。

この場をかりて、出品の機会をあたえてくださった、詩人ヤリタミサコさんに深い感謝を。

そして、なにより、卓越した写真家にして新しき詩的パートナー、谷口昌良さんに、友愛をこめて、深い感謝を。

2019年11月11日月曜日

LUNCH POEMS@DOKKYO, VOL.14開催日変更のお知らせ



 11/21を予定していました、注目の在日イタリア詩人ディエゴ・マルティーナ氏が出演する「LUNCH POEMS@DOKKYO, VOL.14」の開催日が、急遽、今週木曜日の11/14に変更となってしまいました。

 詳細は、LUNCH POEMS@DOKKYO公式ホームページをご覧ください。

https://lunchpoems-dokkyo.jimdo.com

 大変ご迷惑をおかけしてしまい、心よりお詫びを申し上げます。

 とはいえ、ディエゴさんの朗読、とてもいいものになりそうです。

 ぜひ、ご来場くださいませ。

2019年11月7日木曜日

LUNCH POEMS@DOKKYO VOL.13に永方佑樹さんが出演



 すこしレポートが遅くなったが、去る10/17第三木曜日、獨協大学外国語学部主催のポエトリー・イベント「LUNCH POEMS@DOKKYO」に、詩人の永方佑樹さんが出演してくださった。ランチポエムズの公式ホームページでも、インフォメーションをご覧ください。


 一年間の休止をへて、新実行委員会により新たにリブートしたこのランチポエムズ。学外からもお客さんがご来場くださり、盛会となった。
 また、永方さんの第二詩集『不在都市』(思潮社)が、今年度の歴程新鋭賞を受賞!今回のランチポエムズが、永方さんの受賞後初のリーディングとなった。

 朗読は、第一詩集『√3』からスタート。永方さん独自の「立体詩」が試みられた詩集だ。√3=三角形(錐)は、ひらがな、カタカナ、漢字を有する日本語のトライアングルでもあるとか。永方さんの奏でた日本語は、その三種の書字=書記の音響を異化しつつ相乗してひびかせる。その声は、語音というより、日本語に内在する数学的な音楽を聴かせてくれるよう。ミュージシャン系、演劇系の詩人たちの朗読とはちがう、独自の美をもつ朗読だった。

 いっぽう、『不在都市』の朗読は、より現代の位相に接続するリーディング。国際詩祭で共同制作したアーティストたちや翻訳者たちと紡ぐテクストをスマートフォンの声で再生したり、天台宗僧侶に詩篇を朗詠してもらうなど、声とエクリチュールの関係性を、二項対立をズラしつつ、新たなポエジーの立体へと構築してゆく。
 永方さんは、都市を「不在」の集合と観じているとか。とまれ、詩人のアクセスする不在は、けっして否定的な空虚ではない。永方さんは、この不在にむけて、つぎつぎと新たな詩のアイディアを創造して挑む。すると、あれこれと手を尽くしつつ、詩人が不在から湧出させるクリエイションが、とても豊かなものにみえてくるから、不思議だ。
 ランチポエムズで出逢った永方佑樹さんという詩的発明家の相貌は、アメリカの前衛詩人ガートルード・スタインを彷彿とさせる。学生さんたちも、詩人の豊富なアイディアに圧倒されつつ、たのしんでいたようだ。
11月末には、イベントの動画も配信される予定です。「LUNCH POEMS@DOKKYO」のホームページ、または本ブログでも告知をしますので、ぜひ、ご期待ください。

次回、11/14木曜日のランチポエムズ(11/21から諸事情により、急遽変更になりました!)も、じつに、たのしみな詩人。マルティーナ・ディエゴさんが出演の予定。ぜひ、ご来場を。

 ランチポエムズのリブートにふさわしい詩人を招くことができて、ぼくも原先生も実行委員会のメンバーも、大満足のイベントでした。

 永方佑樹さん、ほんとうに、ありがとうございました!

2019年10月23日水曜日

『Asian Dream』刊行記念イベント@横浜「ちぐさ」



今年の五月末に刊行された、詩とジャズが対話する拙新詩集『Asian Dream』(思潮社)。その刊行記念イベントを、日本最古といわれる横浜野毛のジャズ喫茶&バー「ちぐさ」にて、来たる11/30土曜日に開催していただくことになった。

白石かずこ、諏訪優、吉増剛造といった詩人たちがそうであったように、日本の現代詩の朗読は、ジャズとのセッションからはじまったといっても、過言ではないだろう。そんな、詩とジャズの蜜月が、失われてひさしい。

生前、ジャズ評論家であり音楽エッセイストでもあった、吉田衛氏が創業した「ちぐさ」。日本に本格的なジャズクラブもなく、輸入レコードも希少だった時代。「ちぐさ」には、日本のモダンジャズの草創期を綾なした守安祥太郎、渡辺貞夫、秋吉敏子、日野皓正、山下洋輔といったミュージシャンがかよい、当時の最新海外ジャズを吸収したという。また、吉田氏は優れた仕掛人でもあって、ジャパニーズ・ジャズの黎明を告げた「モカンボ・セッション’54」などのレコードのリリースに深く携わった。「ちぐさ」は、まさに、伝説的なお店なのだ。

本イベントは、たんに刊行記念というだけではなく、そんな「ちぐさ」にオマージュを捧げ、魅力的なゲストをお招きしながら、ジャズ史を物語る「ちぐさ」秘蔵のアナログレコードと詩の朗読セッション。トーク、ダンス、飛び入り朗読(シットイン=sit-in)など、盛りだくさんの愉しい一夜にしたいと思います。

詳細は、下記インフォメーションをごらんください。また、限定三名様のSit inの募集もしています。この機会にジャズとの朗読を愉しまれたい方は、本ブログのコメント蘭にペンネームを書いてお申し込みください。『現代詩手帖』11月号でも1/2ページ広告を掲載しています(「ちぐさ」でのシットイン受付、入場予約はしておりません)。



石田瑞穂詩集『Asian Dream』刊行記念イベント
Poetry And Jazz And Night
-Tribute to Chigusa-

出演

石田 瑞穂 (詩人)
マルティーナ・ディエゴ (詩人)
永方 佑樹 (詩人)
レンカ(踊り) and more…

日時 20191130日(土曜日)19:00 start 21:00 end 
    (18:30開場を予定)
場所 ジャズ喫茶 ちぐさ
   神奈川県横浜市中区野毛町2丁目94

入場料 無料(ワンドリンク注文制、予約不要)
後援 思潮社


みなさまのお越しを、心よりお待ちしています。

2019年10月14日月曜日

バリ島での休息





 一週間ほど、バリ島にいってきました。

 帰国の日は、ちょうど台風十九号が日本に到来しつつあり、台風とおいかけっこをしながらのフライト。乱気流に機内はすごくゆれて、飛行機酔いをする客が続出したのだった。

 翌日、数十年に一度の勢力の大台風は、各地におおきな被害をもたらした。災害に遭われた方々に、心からのお見舞いを申し述べたい。



 さて、バリではすこし仕事もしたけれど、滞在した「メリアホテル」の敷地からほとんど一歩もでずに、プライベートビーチで泳いだり、たまっていたプルーストを読んだり、バーでカクテルを呑んだり。

 ホテルは、まさに現代のルンビニ園のごときリゾートホテル。椰子と棕櫚の木が茂り、紅白のブーゲンビリアやみたことのない百合が咲き、朝夕に蓮が開花する。
 払暁とともに、メグロヒヨドリが木のフルートのような美しいさえずりを聴かせてくれて、カワセミよりひとまわりおおきいジャワショウビンが電光石火の速度で飛び交う。バリ島の野鳥たちは、あの全身に虹をまとった小鳥、セイコウチョウがそうであるように、歌も姿も鮮やかで自己主張がとてもつよいのだった。

 ビーチはえんえんと遠浅の海で波もおだやか。紺碧から薔薇に刻々とうつりかわる海を眺めながら、海辺のテラス席で夕食をしたためる。ながらく、欧州の植民地であり交易も盛んだったバリ島は、地ワインも本格的で美味しい。
ホテルの隣には、「ミュージアム・パシフィカ・バリ」(バリ太平洋博物館)もあって、ちょうど、バリ島美術の特集展を開催していた。地元のアーティストのほかに、オリエンタリズムをもとめてバリに滞在したドラクロワ、ルソー、ゴーギャン、マティスの作品もある。ゴーギャンのちいさな彫像「大地から生まれる女神」もよかったが、20世紀初頭のドイツ人画家ヴィレム・ホフナーのえがいた「聖泉で沐浴する女たち」が、とてもよかった。豊満な胸もあらわに、色とりどりの布地と花々を水鏡にした聖なる泉で沐浴する少女たちの姿が、止めようもなく失われたありし日のバリをとりもどす。

とある日の、明け方の一時間。ガジュマルの巨樹がめのまえに聳えるバルコニーで、ぼくは一篇だけ、ツバメ印のノートに短い詩を書いた。若い詩人たちからの依頼で、未だ名前も知らないポエトリマガジンの創刊号のため、一息に書き下ろした詩だった。

銀軸のボールペンを擱くと、彼方からの潮騒と、うるさいくらいのオオジロムクドリの歌声が、世界の夜明けをしらせてくれる。

いずれ、バリと詩についてエッセイを書く日も、くるだろう。

2019年10月6日日曜日

左右社WEB連載「詩への旅」第五回掲載とイベント情報



 今月の詩的紀行エッセイ「詩への旅」が、掲載されました。

昨年10月に他界され、ちょうど一周忌にあたる、日本を代表する詩人、入澤康夫氏と出雲をめぐる紀行文です。

おこがましいかもしれないけれど、ぼくにとって、入澤氏に寄せる「わが鎮魂」なのかもしれない。詩人のご冥福を心からお祈りして。

下記URLより、ぜひ、ご一読ください。


 それと、イベント情報とありますが。

 今年五月末に刊行された、ぼくの新詩集『Asian Dream』(思潮社)の刊行記念イベントが、急遽、11月末に開催決定いたしました。

しかも、詩集の後書でふれた、現存する日本最古にして横浜野毛のジャズ喫茶店「ちぐさ」さんにて。
 
本日午後からバリ島へ発つため、詳細は後日、本ブログでお知らせしてゆきます。

詩の朗読とジャズのセッション、トークなど、魅力あふれるゲストをお招きして開催する予定です。ご期待ください!

*次回更新は10/15をめざします。See you later alligator!