2020年3月30日月曜日

桜回廊花見






未だ大輪の冬牡丹が咲き残っているのに、庭のしだれ桜が満開。散歩コースの見沼桜回廊も八分咲きになった、先週。

コートのポケットにマイ盃をつっこんで、お花見にでかけた。

全長20kmにちかい桜回廊は、歩いても歩いてもえんえんと桜の花で、夢のように美しいが、ちょっと気分が変になるのだった。
今年は午后から夕方まで十五キロほどウォーキングしながらのお花見。染井吉野のほかにも、権桜、牛島桜も咲きそろう。写真のように、刻々と昏れゆく光のなかで花も表情をかえ、独歩の花見も華やぐのだった。

女氷川神社でお参りしたあと、田端のベンチにすわり、ちかくの酒屋で買っておいた賀茂鶴純米のパック酒をやおらとりだし、マイ盃に注ぐ。今春、手に入れたばかりの各務周海晩年の黄瀬戸猪口である。春の生酒を呑むのに、丁度いい。

薄闇がしだいに濃くなると、名残惜しくも桜に別れを告げ、浦和へ。毎年、花見のあとは、老舗中村家の鰻で一杯やることにしているのだ。黄瀬戸の猪口に、こんどは、埼玉の銘酒神龜限定生酒を注ぐ。きも煮でお銚子一本。腹の虫が鳴きだすころ、香ばしく焼けた鰻のお重をつつきながら、もう一本。

桜よ、ありがとう。また、来年も、咲いておくれ。

2020年3月20日金曜日

左右社WEB連載「詩への旅」が更新



 徹夜で原稿を書き了えた朝。すこし仮眠をとって、浦和まで奥見沼を散歩しつつ、原稿を投函しにゆくことにした。もちろん、ランチはふだん使いのお鮨屋さんで、昼呑みをする、というオプションつき。

 桜回廊を散策しながらバス停へむかうと、染井吉野の蕾ははちきれんばかりにピンク色にふくらんで、あと数日で開花してしまいそう。陽気もよかったから、おなじく散歩の子連れや高齢者、ジョガーでにぎわっている。

 ところが、浦和につくと、新型コロナのせいで人通りの絶えた街は、がらーん、としており、平日は並ばないとランチできない飲食店は、ほとんどシャッターをおろしていた。里山のほうが、人手あったのだった。

 さて、お鮨屋さんは開店していたものの、ぼく以外はだれも暖簾をくぐらない。桜色の小鯛のお造りとコハダの小握りでお銚子が三本あくと、いつもは謹厳な主人が「もう、客もこねえだろ。石田さんと、呑んじまおうか」などと、自棄になっていう。

 さておき。左右社WEB連載の詩的紀行文「詩への旅」が、掲載されました。


 諸事情あって、更新がストップしていましたが、今回の旅は、フランスです。   
 さらに、今月末にはもう一本、おまけの更新 笑 四月からは月一本のペースで掲載してゆきます。

 こもりがちな日々。せめて、こころは詩的に旅しませんか?

2020年3月15日日曜日

浅草の早春賦





 桃、三又、河津桜につづき、辛夷が咲き、ついに、しだれ桜も開花。ことしは冬があったのだろうかと思う間もなく、春が、きてしまったようだ。

 そんな、早すぎる早春の一日、ぼくは午前の浅草にきている。隅田川をあるいて、駒形堂へお詣り。今年初の花見をして、仕事へ。この日は、四件の打ち合わせ。一日、七時間、カフェやバーをわたりあるいての会議。

 午後は、六本木の新感覚にして気鋭のギャラリー、YUTAKA KIKUTAKE GALLERYから詩画集を刊行する企画があり、執筆を依頼されたぼくは蔵前へ。

 つぎは、来年リリース予定のインターナショナル・ポエトリィ・サイトの打ち合わせ。海外観光客でにぎわう隅田川沿い、厩橋ちかくのブティックホテルnuiのバーで、副編集長の二宮豊氏と、コンテンツやネーミングの会議。ぼくは、話しすぎで疲れており、隅田川ブルワリーのペールエールを、もう、呑んでしまうのだった。

 夕方。早い時間から、二宮さんと、駒形どぜうへ。厩橋そばの生まれで、筑摩書房時に勤務していた詩人吉岡実が、西脇順三郎と連れ立ち、おとずれた店でもある。

 いつもの、鯉の洗い、新香、田楽、丸鍋もたのんだが、駒形どぜうが初めてという二宮さんのために、どぜうの蒲焼を追加した。

 小説家の吉田健一も大好物だった、どぜうの蒲焼は、金沢の方々にいわせると、庶民のソウルフードだとか。駒形どぜうの蒲焼は、よりすっきりとした醤油たれで香ばしく焼かれ、ぷりっと太ってい、臭みは皆無なのだった。

 詩やアート、サイトの話を歓談しつつ、さいごは、どぜうのだしのとれた丸鍋に葱だけをいれ、くたくたになるまで煮焼きしてから、熱々の白米にかけて食べる、葱飯まで完食。

 酒食後は、バーをさがしながら、ふたりで夜の仲見世をそぞろあるいた。新型コロナの報道や安倍政権の失策のせいで、浅草寺は閑散としていたが。インバウンドまえの冬の浅草が、もどってきたともいえよう。

 これを好機と、静穏な境内で、夜桜を満喫したのだった。

2020年3月3日火曜日

冬の京都、祇園にて









京都大学での集中講座と、連載エッセイの取材で、冬の京都へ。

新型コロナ報道の影響もあってか、京都はやや空いていた。そのおかげで、ゆつくり、心地よく旅ができた。ここ数年、京都は、オフシーズンもない繁盛ぶりで、さわがしかったが。やっと、インバウンドのまえの静かな、冬の京都へたどり着いた気がする。

最初は、木屋町の馴染みの旅籠に宿泊し、つぎに四条松原の糸屋ホテルに連泊。大学側のきゆうをよそに、二日におよんだ講義はほぼ全員の90名が出席。講義後は、先生方や学生さんたちと祇園のろっこんやサンボアへくりだす。

東山エリアは、湯とうふの奥丹総本家も野村美術館も、閉まっていたけれど。

祇園は、ふだんは絶対にはいれない、オフの舞妓さん支持率No. 1の吉祥菓寮本店がならばずにはいれて、学生さんたちも感激。あの、摘みたて苺パフェを食そうとしたら、、ちょうどさいごの一杯だという。1,500円もするのに。女子学生さんに、ゆずってさしあげた。ぼくは、きなこのロールケーキと紅茶。吉祥名物の本わらび餅もはいっていて、満足、満足。

一澤信三郎帆布にたちより、トートバッグを購入した。前回は、濃紺だったが、今回は生成りの帆布にする。生成りは、作家の向田邦子氏が愛用していた。京都にゆくたびに買って帰る、一澤信三郎帆布のトート。自宅では、土のついた野菜やワイン、日本酒をいれて持ち歩く、ふだんづかいの買物鞄として重宝している。

葱やバケットが、ちょいと、バッグの口からのぞいているだけで、なぜか、うれしい気分になるのだった。