2019年6月29日土曜日

読売新聞に詩が掲載





 6/28発売の読売新聞文化欄「にほんご」に、詩が掲載されました。

 タイトルは、「天使が通うバー」。その意味は、お読みいただければわかるはず。今回、いただいたお題は、「梅雨を感じさせる詩」。南関東では、空ぶり気味の梅雨ですが、詩は、思いっきり、梅雨しています。

 機会がありましたら、ぜひ、お読みください。

 ちなみに、『Asian Dream』の紹介記事も、東京新聞、ダ・ヴィンチ誌に掲載していただいたとの由。ありがとうございました。

 上写真は、印判手の手炙りを花器に見立て、庭の紫陽花を生けた。下写真は、ふしぎな梅雨の花、ホタルブクロを初期李朝の祭器残欠に。机上の、ペンをもつ手のそばにおいて、時折、原稿用紙から顔をあげては眺め、眼を休めていた。


 アメリカ西海岸のポエトリー・サイトRHINOからも、英訳詩の依頼が。今月〆切だったアムスのサイトPoetry Internationalもそうだったけれど、ここ数ヶ月は、新聞や欧米のサイトなどから詩の依頼がつづく。

 詩を書く場所の変化を体感しつつ、ペンを執る日々。

2019年6月21日金曜日

『Asian Dream』のJazzたち:「Slang」、「Afro Blue」、「Map of the World」、「34 Skidoo」



五月末に刊行された新詩集『Asian Dream』(思潮社)に登場するジャズたちについて触れたい。

 写真のCD、前衛サックス奏者のスティーブ・コールマン(Stieve Coleman)率いるStrata Instituteのアルバム「C-I-P-H-E-R S-Y-N-T-A-X」(BAMBOO)。詩篇「Slang」は、その一番最初の曲。ちなみに、ジャケットには、スティーブによる「is a dialect of the M-BASE language」という注が付されている。
 M-BASEとは、これも、スティーブが編みだした造語で、多文化のリズムをベースにした音楽、というムーブメント。70年代以降のアフロ・アメリカン文化では、体制側の言語によらない、独自の造語をアフロ・アメリカン・コミュニティーに流通させることで、文化、言語の独立を多様な姿で獲得しようとしてきた。このことは、ロック、ヒップホップの歌詞、グラフィティやストリート・カルチャーにも多大な影響を与えてゆく。
M-BASEは、ジャズを母体に、ロック、ファンク、ラップはもとより、キューバ、カントリー、民族音楽、多旋律のクラシック、ストリートの雑踏など、あらゆるリズムを横断しつつそれらをマクロにベースにした、新たなアフロ・アメリカン音楽を模索しはじめたのだった。
 「C-I-P-H-E-R S-Y-N-T-A-X」は、そんな新しい波動をキャッチして世界に送りだしていたBAMBOOレーベル(残念ながら、いまはない)からリリースされて、90年代ジャズの始動を飾ったアルバムだと思う。以下、リンクをしておきますので、ぜひ、一聴を。

Slang

さて、同アルバムにはブルックリンのスラムを意味する「Bed Stuy」(ベッドスタイと発音)という曲もある。「Slang」もそうだけれど、スティーブとグレッグ・オズビーのアルトサックスのソロのかけあいは、正統派ジャズの即興演奏ではなく、もはやラップのそれにちかい。

Afro Blue」は、ご存知、ジョン・コルトレーン(John Coltrane)の名曲。マッコイ・タイナーのピアノが、やばい。

Map of the World」は、同名の映画の音楽を担当したパット・メセニー(Pat Metheny)のサントラアルバムから。

34Skidoo」は、ビル・エヴァンス(Bill Evance)のオリジナル・ナンバー。ぼくは、ずっと、一昨年逝去したビル・エヴァンス・トリオの個性的な名ドラマー、ポール・モチアン(Paul Motian、ちなみにアメリカではモシャンと発音)のアルバム「ビル・エヴァンス」(BAMBOO)のヴァージョンを愛聴しているのだが・・・あれ?消えちゃってる。ポール・モチアン・バンドのカヴァーは、もっとロックぽく、切なく、かっこいい。同アルバムは参考までに、こちらも名曲中の名曲「Turn Out the Stars」をリンクしておきます。
34 Skidoo」(オリジナル録音)

「パリス・コンサート」収録の「34 Skidoo
(聴き比べのため、エヴァンス本人の演奏では一番好きな録音)

Turn Out the Stars

詩集とともに、お楽しみください。

2019年6月19日水曜日

「碧」を呑む




 近年、かよっているなかでは三指のバーが、浦和のリンハウスさん。

 そこで、「碧」という、スコッチを呑んだ。‎サントリーが今年五月にリリース、一般販売はされていないボトル。写真ではわからないが、瓶が、五角形になっている。このボトルが、世界五大ウィスキー(五大モルトではない)をブレンドする、というコンセプトにもとづいて醸されているからだとか。

 ネーミングが、にくい。スコッチは、黄昏時の海の色をしていて。

 味は、淡麗、という表現がよいかもしれない。

 バーボンをふくむ五大ウィスキーをブレンドしたというから、個性が衝突する印象があったけれど、呑み口はやわらかく、松の香りに揮発し、つぎに、やわらかくキックする苦味がきて、スモーキーな余韻が舌に響いてゆく。


 ネーミングとデザインにはじまり、最後まで綺麗にまとめた、完成度の高いボトルではなかろうか。まあ、強烈な個性をもとめるファンには、すこうし、物足りないかも。が、優れたブレンドだ。ぼくには、呑みやすく、それでいて、なにか遠いウィスキーたちの物語を聴く、不思議な余韻に酔えるボトルなのだった。

 これ、ほしいなあ。

 じつは、呑んで、感心している場合ではない。

 三月の東京新聞につづき、今月は読売新聞から詩の依頼をうけている。〆切は、明後日。だが、一行も書いていない。べつの文芸誌からの依頼で、百行の詩を送稿したばかりなのだ。経済的にも詩的にも、ストックなんてもちあわせてないから、からっケツのガス欠。

 それでも、秀逸なスコッチに触発されたか。ぼくは、銀軸のペンを鞄からとりだし、大学のレポート用紙をカウンターにおいて、詩を綴りはじめた。


 帰路は、なぜか、講義でとりあげた、萩原朔太郎「悲しき月夜」を蛙と合唱しつつほろ酔い気分で揚々と歩いたのだった。

2019年6月11日火曜日

『Asian Dream』のJazz:小曽根真「Asian Dream」



これから、ときおり、五月末に刊行された新詩集『Asian Dream』(思潮社)に登場するジャズたちをご紹介したい

 詩とジャズがインタープレイ(対話的演奏)するようねがわれて書かれた本詩集は、各詩篇が、90年代のジャズの曲からとられている。

タイトルポエムの「Asian Dream」は、日本を代表するジャズピアニスト、小曽根真氏のオリジナル曲。なんど聴いてもため息が零れでてしまう、美しいバラードで、ベースがジェイムス・ジナス、ドラムスがクラレンス・ペンという黄金編成のトリオ。
2001年のアルバム「ソー・メニー・カラーズ」に収録されている曲だが、ピアノとベースのソロがながいライブバージョン(下記リンク)も愛聴している。 
詩とともに、ぜひ、聴いていただきたい。


ぼくは、この曲に、傷ついたアジアの人々が、現実を超え、慈悲と知彗で世界をおおきくつつみこんで生きる哀しみと勁さを聴いてきた。

小曽根さんのピアノには、graceという英語がふさわしいと思う。それは、優美、であるとともに、慈しみと恵みをあらわす言葉だから。