2018年11月30日金曜日

レンカ、金子雄生デュオ公演「ゆ・れる ゆ・れる」



 去る11/15夜、東京阿佐ヶ谷の名曲純喫茶ヴィオロンにて開催されたレンカ(踊り)と金子雄生(Cor,民族楽器)のデュオ公演「ゆ・れる ゆ・れる」を観にいった。12/9に板橋宿本町Dungeonでレンカさんとともに、ぼくとポエトリー・パフォーマンスにご共演いただくロックバンドAram(アラム)のベーシスト村岡佑樹さん、ギタリスト野澤夏彦さんもお誘いして。

 大正期にタイムスリップするかの格調高い木づくりの店内。上座には、巨大なスピーカーと蓄音機が鎮座している。ハイフェッツらのポートレートとともに、そこかしこうずたかく積まれているのはすべてレコード。CDなぞは一枚もない。
 画家美作七郎ゆかりの喫茶店としても知られ、店内の壁には氏の油彩画が架かる。玄関ドア脇には、画家と親交のあった作家五木寛之氏の生原稿も展示されていた。

 マスターから、ブランディをしたたらせた香り善きドリップ珈琲をいただきながら、音楽と踊りの奏でる宇宙に陶酔した二時間だった。

 金子氏のコルネット、パーカッション、口琴、歌、ときには詩の朗読の近傍で、背中のファスナをおおきくひらいた紅いドレスのレンカさんが、細く絞り鍛えた背筋を蠢かせながら、妖艶に舞う。うごきは、微動をくりかえし、じつにゆるやかに放物線をえがく四肢で、金子氏が投げかける物音にさわり、新たな〝ゆれ〟へと踊りでる。生きた石に鑿をあてたかの、肉態、踊り。
 ダンスたることも舞踏たることもゆらす、レンカさんの融通無碍の軀動は、まさに踊りのヌーヴェルバーグだと思う。そんなレンカさんの「隣」を奏でる金子氏の多彩な音楽とアプローチは、独りだけのビックバンドのようだった。

 公演後は、誘い合わせて来たAramのベーシスト村岡佑樹さん、ギタリスト野澤夏彦さんとちかくのRojiへ。ミュージシャンたちがよくあつまるバーなのだとか。ぼくはタリスカーを呑みつづけ、ロック、ジャズ、今回の公演について、おふたりと語り明かしたのだった


*ヴィオロン店内は撮影禁止でしたので、許可をいただき、上記画像を掲載させていただきました。

2018年11月23日金曜日

リサンミゲル@デザインフェスタギャラリー



リサンミゲルさん



石田瑞穂 Photo by Maru


 去る11/3、原宿のデザインフェスタギャラリーWESTへ。リサンミゲル、ずーしー、パン、Makiron、マル(スタッフ)各氏の20代のアーティストたちによる展覧会「Selfish 」が開催されていたのだ。
 デザインフェスタ、いま、若いアーティストのあいだで有名な人気スポットだけれど、ぼくは、はじめてうかがった。
 常時、7つほどの展示がおこなわれているらしく、中庭にすてきなカフェバーもあり、グラフィティアートが壁面に彩られている。
 以前、渋谷駅のちかくに住んでいたことがあって、キャットストリートにはよく来ていた。本格派の現代アート、アニメ、アンダーグラウンド、モデル撮影フォトまで、多様なアーティストの展示がつどう。こちらにくるだけで、東京アートの「いま」が、コンパクトに体感できそうだ。観光名所にもなっているらしく、フランスやアジアの方々もおおかった。入場料無料なのも、いいですね。
 透明でノスタルジックな画調だけど、どこか不穏なメモリーでもあるリサンミゲルさんの絵画や写真作品。そして、絵画や写真と呼応するように詩作品もいくつか展示してある。展示の数日前に、彼女の第一詩集『リハビリテーション』が刷りあがってきたばかりだともいう。
 その日は純粋にみなさんの作品を
観にきたのだけれど、ポエトリーリーディングをごいっしょすることになった。展示作品をまえにセッションがはじまる。

 詩の朗読は、めずらしくもあるのだろう、日本人や海外観光客もたちどまり、作品を観て、言葉に耳をすまして去ってゆく。観覧者のなかには、もともと詩に興味のある方もいるらしく、いっしょにリーディングしませんか?と誘うと、なぜか、スマホに詩がはいっており 笑 バスぺールエールを片手に二時間、リーディングに興じた。多彩な作品を聴けたし、気負いもせずにゆるゆるとセッションできて、楽しかったなあ。クラブでの演奏のあと、ジャズミュージシャンもよくやるセッションのように。
 この夕方のセッションがきっかけとなり、展示期間中は全日、自由参加のリーディングをしたらしい。デザインフェスタでも話題になり、スタッフブログで紹介されたとか。スタッフブログは、下記リンクをご覧ください。
http://designfestagallery-diary.blogspot.com/2018/11/selfish.html

 みなさん、ありがとう!デザインフェスタも、ぜひ再訪したい。

2018年11月15日木曜日

12/1-9 Dungeon「直角はありません」開催


 きたる12/1から12/9まで、板橋本町駅からほどちかくの個性的なアートスペース Dungeon ダンジョンにて開催される、画期的な詩と現代アートのコラボレーション展覧会「直角はありません」。

 その千秋楽の9日の日曜日17時から、以前からゆるゆるお知らせしている、踊り手のレンカさん、新世代ロックバンドAram(アラム)のベーシスト村岡佑樹さんとギタリスト野澤夏彦さんという、ドリームメンバーの肩をかりてポエトリーリーディングに挑みます

詳細は、下記、公式ブログ「地下室ブログ」をごらんください。

http://chikashitsu.blog.shinobi.jp

 Aramは、11/11に下北沢で大盛況に湧いた、CD発売記念ライブを敢行したばかり。アルバムリリースを目前に、いまノリにのっているバンドだ。

 公演は、板橋アートプロジェクトの助成により、入場料は無料です。

 Dungeon は、その名のとおり、半地下に存在するコンクリートむきだしの地下壕のようなスペース。ニューヨークの伝説的なアートスタジオNitting factory を彷彿とさせる。アンダーグラウンドアートのファンや廃墟マニアには、たまらないスペースかもしれない 笑‎

 公演時刻や場所など、ウェブサイトでチェックして、ぜひ、おでかけください。

2018年11月10日土曜日

骨董市と上海蟹






 さる11/2金曜日。詩人の城戸朱理さん、写真家の小野田桂子さん、小説家の中沢けいさんとパシフィコ横浜で待ち合わせ。「横浜骨董ワールド2018」に出かけたのだった。中沢けいさんは〆切中でこられないとのお電話。

 けれども、今回の骨董祭、城戸さん曰く「骨董市なのに骨董がない」、ざんねんな結果に。三人とも収穫ナシで会場をあとにした。

とまれ、そんなことは骨董市にはつきもの。最初から、本日のメインは横浜中華街の銘店「桃源屯」で食す上海蟹ときめてあったのだ。

上海蟹。立冬のころが旬で、李白をして「究極の美食にして、至高の沈黙」と吟しめた食物である。
沈黙というのは、蟹を食べるときは皆黙ってしまうということ。桃源屯の上海蟹コースは、まず、紹興酒で生の蟹を漬けた「酔っぱらい蟹」から。つぎに、まっ赤に、ほっくり炊けた「ゆで蟹」。しまった身もおいしいけれど、頭胴にみっしりつまった、蟹味噌、卵、白子が、たまらない。4、6、8年ものの甕だし紹興酒をつぎつぎ口にふくみ、酒の味香が口内に残留しているうちに蟹をいただく。酒と蟹味噌が口のなかで甘くとろけあう。箸で蟹味噌がとれなくなったら、甲羅に紹興酒をそそぎ濯いで呑む。酒、蟹。酒、蟹。ぼくらも、ただ、黙々と食し、呑んだ。なるほど、至高の沈黙。
中沢けいさんの分まで、四人前の上海蟹を堪能したのだった。

東門で蟹ならずプードルらしき犬と戯れつつ、ここちよく酔い歩き、ぼくの宿泊先のホテルニューグランドのバー「シーガーディアンⅡ」へ。満席。よって、城戸さんの知っている静かで落ちつけるスタンダードバーでさいごに一杯。
ホテルの部屋にもどり、あしたはイベントなれど、幸せに、ふら、ふら。翌朝。上海の海の味と馨が、まだ、口中と味蕾にのこっていた。

 後日、ブログの原稿をPC清書してもらったところ、なんだかもうタイトルを一瞥しただけで、またワクワク(ムラムラ?)してきました。

2018年11月1日木曜日

早稲田大学での講義



 早稲田大学理工学部で詩のリレー講義「日本の詩、世界の詩」がはじまった。ことしは、聴講生の数がちょとおおく、130名ほど。和光大学教授にして、ぼくのアメリカ詩研究の先輩、遠藤朋之先生のあとにつづく。ぼくの担当は、日本の近現代詩だ。
 最近、「トランスポーター」シリーズを観たからか、服装は、アルマーニのブラックスーツとタイ 笑

 この講義、フランス詩の後藤美和子先生ほか、錚々たる講師陣が教鞭をとられている。ぼく自身が、先生方の講義を聴講したいくらい。

 さておき、早稲田界隈、というより神田川沿いは好きなエリアなのだった。だから、毎年、この時期がくると、秋の神田川散歩を楽しんでいる。庶民派の老舗そばやのもり、関口芭蕉庵、フォーシーズンズになってしまった椿山荘ホテルのバー、鰻のはし本など。講義後は歩行と酒に憩う径があるのだ。もちろん、拙詩集の版元思潮社は、神田川上水の近辺にあり。

 神田川沿いに興趣をおぼえるのは、好著、朝日新聞社会部刊行の『神田川』のおかげもある。神田川沿いに、墨田から西東京までの今昔を解説してゆくこの本の記者さんのひとりは、ぼくの恩人でもあった。

 昨年ふれた、都電荒川線コースもいいですね。


 そんな神田川や都電荒川線散歩についても、拙ブログでご紹介したい。

 早稲田大学の学生さん、ことしも、よろしくお願いします。

追伸 この日、講義では、田村隆一の詩を読む。そのせいで、ひさしぶりに、田村さんが東京一の居酒屋と呼んだ大塚の江戸一にゆきたくなった。満員。よって、大宮駅前の古参大衆酒場いづみやへ。ここの早い時間の常連さん、平均年齢は70歳代といったところ。ハイライトを吸い、焼酎を呑んでいる方もいる。ぼくはブラックスーツとタイで、ホッピー三杯と焼鳥。ゴロワーズを吸っていたら、「お、両切り、なつかしいねえ」と、ご老体。お会計は1600円也。