残暑の渋谷で、左右社WEB連載「詩への旅」でお世話になっている担当編集者の東辻氏と呑む。
道玄坂にある「駒形どぜう 渋谷店」で、納涼に、どぜう鍋でもつつこうという。若い読者の方のために一言添えれば、どぜう、は泥鰌のことです。
その日の気温は、台風一過のかんかん照り。都内では気温摂氏三七度だった。当日、ぼくは、銀座で食ミニコミ誌に寄せるエッセイの打ち合わせがあり、つぎは神保町へ。都内の各所に立ち寄るたび、あまりの暑さのため「銀座ライオン本店」でマルエフ、「ランチョン」でマルエフ黒ビールと、老舗ビアバーめぐりのような一日になってしまった。
そうして、渋谷。すこし、はやめに到着したので、「黒田陶苑」に寄ってみる。近現代陶芸の酒器展をやっていたので。おめあては、辻清明の絵唐津盃。たちぐい呑みは、ゆるぎない線ながら、懐深いおおらかさを感じさせる姿。雪色した自然釉のかかる枇杷色の肌に、抽象的な文がてんてんと。小山冨士夫の薫陶をうけ、『ぐいのみ』という著作もあり、酒器コレクターでもあった辻清明の作は、酒党にとっては魅力がある。金銭の算段もついたので、購入を希望するも、展示販売前に売却済み、だそう。どういうこと?
写真は、かわりに求めた内田鋼一作の朽木手湯呑。冷房のきいた店内で、東辻さんに「詩への旅」の自筆原稿コピーを手わたし熱いどぜう鍋をつつきつつ、身請けしたばかりのこいつにとぷとぷと酒を注いで茶碗酒。お銚子が四、五本あくと、ぼくの飲み方をみていた駒形の女将さんが、「あらまあ、どぜうで呑むのにぴったりですけど・・・失恋でもしたの?」。
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