2018年4月27日金曜日

「gui」vol.40 no.113 April 2018



 そうとはどこにも主張されていないのだけれど、春に刊行された奥成繁氏編集の詩誌「gui113号では、同人の詩人・藤富保男さんに宛てた詩や散文、翻訳を特集している。

三上寛氏の詩作品「ぼうしをかぶる犬」をはじめ、四釜裕子氏の「先生に会いに資料室へ」(ちいさいけれど、藤富さんの直筆原稿のカットもある)、John Soltさんの追悼文と英語の詩「UNTITLED」など、藤富保男さんと長年交流されてきた方々の作品を感慨深く拝読した。日本現代詩歌文学館・豊泉豪さんの味わい深い私記もある。「gui」を論じた、國峰照子・山口眞理子・四釜裕子各氏の鼎談「この四十年を、少しばかり」も、じっくり拝読。

今号は、ちいさくて瀟洒なタンポポ色のブックデザイン。装幀もデザインも、変わらず秀逸だ。「gui」は奥成さんからいつもお送りいただいていて、毎号、読むのを愉しみにしています。
詩誌を手繰りながら、以前、藤富保男さんとお逢いした日のことを想いだしていた。ぼくは「gui」をフランス語風に「ぎい」と発音したのだけれど、藤富さんは、「あれは、ギ、と読むのです」と柔らかく訂正されたのだった。そうやって、何人もの方に「gui」の発音を正されてきたのだろう。遊戯のように。「VOU」とおなじスピリットで。今号の奥成繁氏のエッセイ「コリツムエン、キゼンたるエゴの羽根をのばす」には、本誌創刊号「あとがき」の引用がされていて、「『gui』は『guitar』の『gui』と発音する」と宣言されていた。
鼎談「この四十年を、少しばかり」には、藤富保男さんの直筆葉書も掲載されていて、万年筆の柔和なくせ字で「gui(ぎ)」という言葉も読める。國峰さんは、藤富保男さん直筆の返信や礼状について「電報よりも速いと言われていました。ワープロは打たず、長い原稿もすべて手書きでした」と、証言されている。ぼくは詩人のヤリタミサコさんからもおなじお話をうかがった。 


文箱から藤富保男さんからいただいた二葉の葉書をとりだし読む。拙詩集『まどろみの島』と『耳の笹舟』への感想が認められている。無論、とても嬉しく、光栄だった。生前の藤富保男さんとは三度しかお逢いしていない。それでも、若輩を憶えてくださってい、義理堅くお葉書までくださった。

gui」の最終ページには、「■服喪中」とだけある。

2018年4月24日火曜日

野毛呑み






  ことしも、フェリス女学院大学での講義がはじまり、すると当然(?)講義後の酒食に悩むことになる。昨年は、居心地のよさもあって、横浜駅西口の、ミシュラン星獲りの鰻や「横浜野田岩」につい通ってしまった。もちろん、大赤字である。

 そんな反省もあって、スノッブな店はもう飽きたし、ことしは渋好みの野毛あたりに河岸をかえた。安くて、旨い店がたくさんある。「ばか鍋 浜幸」(ばか=馬肉と鹿肉料理のこと)が休みで、「鳥芳」さんにはいってみる。いい感じに古びた店内。品のいい静かな老大将と女将さんの鴛鴦店である。ネタケースには、鳥豚牛のみならず、魚介も多くあった。

 ビールをチェイサーに、たこ刺とぬる燗(白鹿、横浜で多いのかしらん)で乾杯。つづいて、アスパラ串、ねぎま串、貝焼串、お銚子二本でフィニッシュ。串焼はすべて二本から注文、酔っ払いお断りがルールとか。小津安二郎が通った銀座の「鳥広」みたいだ。お会計は二千四百円也。味よし、焼き加減よし、大将女将お客さんの人情よし。

 もう一軒。野毛といえば、名JAZZ喫茶&バー「ちぐさ」。壁をおおうかの年代物の大スピーカーで、ジム・ホールの名盤LP『LIVE!』を聴かせていただく。音に奥行きがあって、ほんとうにライブの体感。ライ・ウィスキーのハイボールを片手に、聴き惚れた。

 二軒梯子して、三千円ちょっと。

 ほどよく、気持ちよく酔って、湘南新宿ラインに乗る。

 野毛の夜が、クセになりそうな予感。

2018年4月19日木曜日

骨董市の収穫、古瀬戸麦藁手片口茶碗





 「目白コレクション」の収穫は、写真の、古瀬戸麦藁手片口茶碗。江戸時代中期ごろの作で、伝世品とのこと。継もなく、ほぼ完器。新潟から参加していた「花地蔵」さんから譲っていただいた。

 茶碗とあるのは、茶家が替茶碗として見立て重宝していたのだそう。古瀬戸の肌は、経年してよいぐあいに寂びており、見込みも抹茶を濯ぎたてつづけたことで、ほどよい渋味のうちにとろりとした光沢を湛えている。 

 不思議なもので、新陶の麦藁手にはあまり惹かれないけれど、相応の歳月を経たとたん、茶器として、また酒器として、ぐっと魅力が増してくる。それが、古玩の醍醐味なのかもしれない。酒器としては、酒が一合強はいるサイズ。地肌をおおう、麦藁手固有の橙色の線と色彩も、絶妙なバランスではないでしょうか。

 古瀬戸麦藁手片口には、柳宗悦のやはり茶碗に見立てた優品があり、白洲正子旧蔵のものがあるが、どちらも器形が円い。方形は、珍しい、とか。

 ぼくは抹茶碗、酒器、両用するつもり。酒器なら、晩夏から初秋にかけてが最適でしょう。手持ちの盃であわせるなら、くらわんか平盃か、古唐津山盃なんかがいいかも。

 長年、憧れてきた器だから、出逢えてとてもうれしい。 

2018年4月13日金曜日

桜と骨董市





各大学での講義もはじまり、あすは、学習院大学でトーク。そのあと、ついでに、じつにひさしぶりに、

骨董市に、ゆくのだ 笑

「目白コレクション2018」。毎年春と秋に、全国から良質の骨董屋さんが集結して、掘り出し物もおおい。昨今のジャンボリーとくらべ出店数はすくないものの、どの店も粒ぞろいなのだ。東京の「古童」さんや、京都の「しかまファインアーツ」さん、石川の「タユタフ」さんなどもくる。関東からはそうそうゆけない、気になるお店がけっこうでるので、期待がふくらむ。

仕事そっちのけで、買物やそのあとの呑み処の目星をつけようと、いそいそペンをはしらせる。遠足は家をでる前からが遠足なのだ。すると、デスクのうえの、一輪挿しにしている李朝水滴から八重桜の花が、はらり、散華した。
仕舞いかけの御衣黄と福禄寿の枝を何本かもらったので、部屋が桜だらけになっている。写真の海揚の西洋水瓶もそうだけど、ここ数日、夜は自室でスコッチを呑みつつお花見しているのだ。仕舞いの桜なので、ときおり夜の静寂に、はらり、落花する。その花びらや花房は棄ててしまわずに、水を張った無地の古石皿や古瀬戸鉢に投げいれておく。
しばらく、愉しんだら、お風呂にいれて桜風呂にするのだ。
椿や牡丹もそうやって愉しんできたし、これから咲く躑躅もそう愉しむつもり。

市では、酒器に目がいってしまいそうだけれど、最近は古美術や食器のみならず花器になりそうなものを手にとることがふえた。見沼の自然のおかげです。
トークだから、こちらも十年以上履いているオールデンの古靴を蜜蠟で磨こうとするも、はて、骨董市だから、スニーカーじゃだめかしらん、などと悩みはじめたり。 

 ついでが、ついでじゃなくなるのが、骨董市。

2018年4月10日火曜日

『アニメ聖地88Walker』




   KADOKAWAから発売されたばかりのウォーカームック『アニメ聖地88Walker』に、翻訳協力をさせていただきました。

「現代詩手帖」でもいっしょにジュディ・ハレスキ(Judy Halebsky)さんの詩の日本語訳をした二宮豊さん、そして、大蔵彩花さんが中心になって英訳を担当したのだった。

アニメツーリズム協会公式ブックレットでもある本書は、読んで字のごとく、アニメ作品の舞台となった日本各地、たとえば、『君の名は。』の飛騨市や『らき☆すた』の久喜市(春日部・幸手)など、いわゆる「アニメの聖地」をガイドするムック。ぼくの「別荘」(*とある天然温泉施設)がある埼玉の春日部も、『クレヨンしんちゃん』や『らき☆すた』の聖地として掲載されている。幸手の桜土手は、ことしもよかったですよ。
あと、掲載はされていないけれど、『RD潜脳調査室』(個人的には、英訳のReal Driveのほうが好み)の聖地、唐津がアニメ化されたときは、ヴィジュアル・ポエットの巨匠・高橋昭八郎さんのことをなつかしく思い出した。
ちなみに、『小林さんちのメイドラゴン』(けっこう、好きだった。声優の田村睦心さんも、密かにファンです)の聖地・越谷にある居酒屋「どん」(主人公・小林さんがよく会社帰りや休日に立ち寄り、メイド談義に華を咲かせる)や利根川縁は学(悪)友が住んでいて、深夜、酔っ払ってよく徘徊していたっけ。『小林さん』を観ていたころは、東京都北区と思っていたのだけれど。だから、ノスタルジックに感じたのかしらん。

つい、埼玉噺に熱がはいってしまったが 笑 ぼくらがかかわった英訳は、アニメ聖地を訪れようとする海外観光客のためのページ。画期的だと思います。

編集部の河合さん、九島さん、そして、オファーしてくださった垣貫さん、ありがとうございました(そして、みなさん、おつかれさまでした…)。

ぜひ、お手にとってみてください。

2018年4月6日金曜日

四月のホームページ



 原稿の〆切がつづき、ブログの更新がままならなかったのに。

 今月のホームページのデザインが、更新されました。

 先月におなじく、デザイナーの菊池雅樹さんが更新してくださった。テーマは、ごらんのとおり、桜。花見がてら、拙事務所に遊びにきた折、早業でやってのけてくださった。

 お礼を申し上げます。

 写真は、ぼくが撮影したものもあるのだけれど、さすがはデザイナーというか、アレンジがおもしろい。

 しだれ桜の花びら一片、浮かんだ盃は、桃山時代から江戸時代初期の無地唐津立盃。ベランダで花見酒をしていたときに、見込に舞いこんだ。

 とまれ、桜が満開だったのは、つい先週のこと。ことしは開花が十日もはやく、庭は、まだ四月第一週だというのに、もう新緑が吹きあげていて。一年も待ち望んだのに、ことしの桜はお花見に浮かれる暇なく、逝っちゃったなあ。

 桜のホームページ、今月中は、せめて、ゆるりとお楽しみください。