2017年4月23日日曜日

見沼の桜回廊


みなさんは、ことし、どんなお花見をされたでしょう。ぼくは、例年どおり、見沼の「桜回廊」を彷徨していました。

花見なのに、彷徨、という言葉づかいは適さないと思われる方もいるかも。でも、ぼくの住んでいる見沼の桜並木は、ほんとうに、長い。元来、東京湾とも接した昔の見沼は遠浅の海。地名にも「東縁(岸)」、「西縁(岸)」がある。その、かつての海、いまは広い広い農業保護区を囲繞する東縁から西縁にかけて、断続的に桜並木が植樹されているのだ。全長、なんと約二〇・二キロメートル。桜並木がぜんぶつながれば、青森県岩木山の桜並木をぬいて日本一の長さになるという。

個人的には、見沼の桜は日本一などにはならずに、知る人ぞ知る静穏な桜の名所であってほしい。








延々尽きせぬこの桜のしたを、ぼくは毎年、七、八キロだけ漂流する。胡坐で花見酒、はしない。スキットルにシングルモルトをいれて、歩きながら、ちびり、ちびり。今年は花冷えの春日がつづき、永く花が保った。そんな年は桜もゆっくりと散華するので、道が花びらいっぱいにちり敷かれ、桜の雪景色のようになる。

枝には、桜の小鳥、キビタキ(黄鶲)がきて、かまびすしく鳴きかわし、冬鳥のヒヨドリと陣取合戦にあけくれている。キツツキも幹をドラミングして。さわがしいせいか、めずらしくコダカが空で旋回していた。タンポポ、レンギョウ、ゴマノハグサ、モクレン、セイヨウナノハナ、ドウダンツツジもいっせいに咲いて。

そして、とうとう、桜の花も本格的にちりはじめた、ある朝。見沼代用水沿いを散歩していたら、お腹のおおきな鴨が、フェンスにとまったまま威風堂々、わがもの顔でがあがあ鳴いている。龍神や女神伝説の風光が、かろうじていまものこる、見沼。いつまでも、のどかで、平和でいてほしい。

桜さん、ことしもありがとう。また来年、お会いできますように。




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