「碧」を呑む
近年、かよっているなかでは三指のバーが、浦和のリンハウスさん。
そこで、「碧」という、スコッチを呑んだ。サントリーが今年五月にリリース、一般販売はされていないボトル。写真ではわからないが、瓶が、五角形になっている。このボトルが、世界五大ウィスキー(五大モルトではない)をブレンドする、というコンセプトにもとづいて醸されているからだとか。
ネーミングが、にくい。スコッチは、黄昏時の海の色をしていて。
味は、淡麗、という表現がよいかもしれない。
バーボンをふくむ五大ウィスキーをブレンドしたというから、個性が衝突する印象があったけれど、呑み口はやわらかく、松の香りに揮発し、つぎに、やわらかくキックする苦味がきて、スモーキーな余韻が舌に響いてゆく。
ネーミングとデザインにはじまり、最後まで綺麗にまとめた、完成度の高いボトルではなかろうか。まあ、強烈な個性をもとめるファンには、すこうし、物足りないかも。が、優れたブレンドだ。ぼくには、呑みやすく、それでいて、なにか遠いウィスキーたちの物語を聴く、不思議な余韻に酔えるボトルなのだった。
これ、ほしいなあ。
じつは、呑んで、感心している場合ではない。
三月の東京新聞につづき、今月は読売新聞から詩の依頼をうけている。〆切は、明後日。だが、一行も書いていない。べつの文芸誌からの依頼で、百行の詩を送稿したばかりなのだ。経済的にも詩的にも、ストックなんてもちあわせてないから、からっケツのガス欠。
それでも、秀逸なスコッチに触発されたか。ぼくは、銀軸のペンを鞄からとりだし、大学のレポート用紙をカウンターにおいて、詩を綴りはじめた。
帰路は、なぜか、講義でとりあげた、萩原朔太郎「悲しき月夜」を蛙と合唱しつつほろ酔い気分で揚々と歩いたのだった。
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