現代アート界で注目をあつめる、六本木の新進気鋭のギャラリー「YUTAKA KIKUTAKE GALLARY」出版部から新刊が出版されました。写真家の谷口昌良氏とぼくの共著、写真詩画集(とでも名づけるべきだろうか)『空を掴め Catch the Emptiness』です。
カドミウムグリーンのドイツ装、A5ノートよりひとまわりちいさい瀟洒なたたずまいが、ぐっときます。
So Booksのリリースはこちらから。
ご存知、谷口昌良さんは本ブログでも何度も登場している。アートギャラリー「空蓮房」を主催される写真家にして僧侶、さらにはギャラリスト、写真評論家、コレクターとしても知られる。谷口さんは、1979年に渡米。ニューヨークでニュー・カラー・フォトグラフィの旗手レオ・ルビンファインに師事した。帰国後は二十年以上の沈黙を経て、2009年から写真集『写真少年』シリーズや、写真家の畠山直哉氏との共著『空蓮房 仏教と写真』を上梓され意欲的に作品発表や執筆活動にとりくんでいる。以後、谷口さんの写真作品は、サンフランシスコ近代美術館およびデンバー美術館のパブリックコレクションにも収蔵され話題をよんだのだった。
谷口さんは、2018年から静岡の三保の松原を定期的に訪れ、アナログカメラを片手に撮影旅行をはじめた。重度の近眼で乱視の谷口さんだが、あえて眼鏡を外ってシャッターをきる。まさに、空を掴むがごとく。撮影対象は、一見、松だが、そこに写しだされたのは驚くべき未見の写真世界だ。三保の松原にゆかりの禅僧白隠の書画のようでもあり、撮る主体とピントを光の表面で迷宮入りさせてしまうアメリカン・ニュー・カラー・フォトグラフィ、その観音業のようでもある…これ以上は、本書を手にみずからの裸眼でお確かめください。
とまれ、本書については、ぼくも未だにこころの整理がついていないのだ。それはとある晩春の午後、駒形どぜうで昼酒をきこしめし蔵前の空蓮房で本書の企画をうかがい作品を依頼されてから、いわゆる即吟というやつで、それからあっというまに本書が上梓されたからかもしれない。ゆえに詩のタイトルも「雷曲」。その疾走感は作品にもあらわれているとおもう。読みかえすたび、本書はぼくのペンに到来した出来事ではなく、他者の旅を生きたような、不思議な感慨にとらわれる。
谷口昌良さんのみならず、ギャラリストにして話題のマガジン「疾駆/chic」の編集長菊竹寛さん、そして、まさに電光石火でこれほど美事な装幀をされたデザイナー木村稔将さんとお仕事ができたことは衷心より光栄です(ちなみに装幀は、写真を光沢紙に、詩を風合いある厚手の特殊マット紙に印刷。一冊の書物で別々の紙をつかいわける離れ業。活版印刷のフォントも美しく、さらにインクには光沢系の粒子が混入してあり、光線の角度が変わると砂浜のように煌めくのだった)。谷口さん、菊竹さん、木村さん、ここに記して感謝いたします。来年はイギリスに招聘されているので(今年の予定だったがコロナで延期)、本書に英訳をつけて持参しようと考えている。
そして、大変遅ばせながら、告知を。7/5開催の「東京ポエケットin 江戸博」にゲストポエットとしてお招きにあずかりました。踊り手のレンカさんに『空を掴め Catch the Emptiness』を舞っていただく予定です。この件は、近々、再告知いたします。
乞うご期待!
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