夏越の鰻
見沼の桜回廊は、もう、落葉をはじめたけれど、まだ、酷い暑さがつづいている。そんな、晩夏。妻と、夏の慰労会と称して、鰻を食べにゆく。浦和の中村家。老舗で、こちらの鰻重はよくJRの広告にも出演するのだった。
晩夏の店内には、常連客がもちこんでそのまま繁えたという鈴虫がさかんに鈴を鳴らしている。風情ある涼やかな音色をたのしみつつ、まずはビールで乾杯。うざく、きも焼き、鰻重をたのむ。こちらの限定きも焼きは、串刺ししない。地酒を二合。
空腹で、鰻が炭焼きされてゆく薫香をつまみに一盃やるかの時間。いい、ですね。
待つこと、45分。捌き、刺し、蒸し、炭で焼かれた鰻重が、到着。赤坂の名店重箱を思わせる、磧型の鰻の盛り。米飯のあいまにさらに鰻がはさまる二段重ね。たれは野田岩よりちょとドライな辛口で、いわゆる黄金に照った焼き色。
ことしは春から鰻を食す機会がすくなかったから、思わず、無言で、夢中でほおばってしまった。そういえば、夫婦やカップル連れのおおい店内も、会話もなく、重箱の隅を箸がかつかつつつく、くぐもった音しか聴こえてこない。
こんな沈黙も、鰻やの風情、なのだろうか。
夏越の鰻、来年もこようと思う。
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