2019年12月17日火曜日

Duo Project「K=A=K=E=A=I」@慶應義塾大学レポート

 


関根路代先生


左 花を贈られるレンカさん


 さる12/14土曜日、英米文学会東京支部大会 シンポジウム「ポエトリーリーディングの現在位置」が開催され、ぼくと、素晴らしき踊り手レンカさんがお招きいただいて、ポエトリーリーパフォーマンスをさせていただいた。

    シンポジウムは、関根路代先生によるアメリカ詩における朗読の歴史からはじまった。つづいて、高橋綾子先生によるアメリカ女性詩人アン・ウォルドマンの朗読とテクストの関係性、斎藤修三先生によるF・チョイをはじめとするアメリカ・マイノリティ詩人たちの朗読についての発表。チョイの詩を詩誌「て、わたし」で訳された詩人のヤリタミサコさんと詩人の山口勲さんも観客席で見守られていた。
    動画ではあったが、アン・ウォルドマンのリーディングは圧巻。どれも素晴らしい発表で、とても豊かな時間をすごさせていただいた。

   そんな、いま、アメリカの第一線で活躍するパンチのきいた詩人たちのポエトリーリーディングのあとでの出演。かなりプレッシャーをかんじつつ、ぼくとレンカさんの、詩と踊りのデュオプロジェクト「K=A=K=E=A=I」がはじまった。
 まず、レンカさんによるソロ。ステージでかすかに重心をずらしつつ、客席の一人ひとりと目線をあわせてゆく、というソロだ。ほとんど踊らないことで踊る、のに、強烈なインパクトがある。
   その、ソロをうけて、ぼくは新詩集『Asian  Dream 』から朗読。レンカさんが、詩の言葉を踊りによって、いまここの時間と空間に紡ぎなおす。

    そのあとは、いよいよ、ぼくらの「K=A=K=E=A=I」がはじまった。ぼくがレンカさんの動きを即興詩へと綴り、そのフレーズをレンカさんがさらなるムーヴメントへとつれだす。
    最初のレンカさんのソロを観て、ぼくのこころはすでに定まっていた。今回の「K=A=K=E=A=I」のモティーフは、不動と動、その波間をただよう無為のトポロジー。ぼくの最初のフレーズは、「いまだ到来しない無為を漂え」だった。
   かけらのような、俳諧のような詩のフレーズがうみだす波動と、レンカさんの踊りの波動がどこかで出逢い、無為の三角波になって漂いだす。
   最後のフレーズは、「音絶えた言葉のホーン   そのミュート  沈黙が踊りでてゆくような」だったとおもう。
   レンカさんの肉体の漣が、しだいに止み、それでいて、なにか言葉にならないエネルギーをみなぎらせてゆく。まさに、沈黙と身体が紙一重で舞台にとどまるような、フィナーレだった。

   ぼくらのあとは、関根路代先生のウォルト・ホイットマンの朗読についての発表。「声と声のかさなりの果てに、音が見えるようになる」という発表に、背筋が、ぞくり。
   最後は、関根先生の司会で、高橋先生、斎藤先生、ぼくによるトーク。このトークも、ぜひ、活字におこしてもらい、文芸誌に持ち込みたい。

   そのあと、出演講師のみなさん、ご来場くださった、原成吉先生、遠藤朋之先生、小川聡子先生、金澤淳子先生、山中章子先生、車先生、林南乃加先生らとともにパーティへ。二次会は居酒屋で。学者のみなさんからの、さまざまな感想、ご指摘を愉しみながら、ビールとワインと酒の夜は更けてゆくのだった。

   レンカさん、関根路代先生、高橋綾子先生、斎藤修三先生に深い謝意を。運営をしてくださった、杉本先生、金澤先生、そして慶應義塾大学の大学院生のみなさん、ほんとうに、ありがとうございました。

    そして、シンポジウムに参加くださったみなさまに、深く深く、御礼を。

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