All Photos (C) 池田 敬太 Keita Ikeda
(写真は上から:レンカさん、石田瑞穂。渡辺めぐみさん。マルティーナ・ディエゴさん。永方佑樹さん。出演者のみなさん)
横浜は野毛に現存する、日本最古のジャズ喫茶といわれる名店「ちぐさ」で開催された、新詩集『Asian Dream』刊行記念イベント「Poetry and Jazz and Night」。盛会のうちに幕を閉じた。定員25名のところ、40名近いお客様にご来場いただき、立見のでる満員御礼でした。心から感謝を申し上げます。
「ちぐさ」にも捧げられた本イベントのタイトル、「Poetry and Jazz and Night」の由来は、ジャズファンの方なら、お気づきだろう。ビル・エヴァンスとスタン・ゲッツの名演のある「You and Night and the Music」からのもじりである。「ちぐさ」創業者の吉田衛さんは、生前、ビル・エヴァンスと昵懇の仲だった。出演詩人であるぼくらの控室には、なんと、ビルの直筆サインがはいったポートレートが架けられていた。
では、当日のセットリストを、以下、そのまま添付しておこう。
「Poetry and Jazz and Night」Tonight’s Poets Lists 30/11/2019
二宮 豊 Yutaka Ninomiya
with
Herbie Hancock and Head Hunters, “Vein Melter” from Head Hunters(1973).
田上 友也 Yuya Tagami
with
Jim Hall & Bill Evans, “I Hear A Rhapsody”, “Romain” form Undercurrent (1962).
関 中子Nakako Seki & 広瀬 弓Yumi Hirose
with
Dave Brubeck, “In Your Own Sweet Way” fromThis is Pat Moran (1957).
佐峰 存 Zone Samine
with
Modern Jazz Quartet, “Pyramid” from Pyramid (1960).
渡辺 めぐみ Megumi Watanabe
with
Bill Evans, “Waltz for Debby” from Waltz for Debby (1962).
永方 佑樹 Yuki Nagae
with
with
Charles Mingus, “Moanin’” from Pithecanthropus Erectus (1956).
マルティーナ・ディエゴ Diego Martina
with
Chet Baker, “Almost Blue” and “I’m a Fool to Want You” from Let’s Get Lost (1987).
トーク「詩とジャズ、夜の声たちへ」
石田瑞穂 マルティーナ・ディエゴ 永方佑樹
石田 瑞穂 と レンカ Mizuho Ishida and Renka
with
Gary Thomas, “Trapezoid” from Code Violations (1988).
詩人の広瀬弓さんも急遽参加し、Sit-innはおおいに盛上がった。ちぐささんの音響はすばらしくて、瞑目して聴きいっていると、すぐそばでミュージシャンが演奏しているような気分になる。まるで、名盤からぬけでてきたような臨場感あふれる伝説のジャズメンたちの音と、詩人たちも、観客のみなさんも、スリリングなインタープレイ(対話)を存分に愉しんだのだった。そして、ふたたび、ジャズファンならお気づきのように、このセットリストの通奏低音が、ビル・エヴァンスなのである。
昨年、第一詩集『元カノのキスの化け物』が話題をよんだマルティーナ・ディエゴさん、詩集『不在都市』で今年度の歴程新鋭賞を射止めたばかりの永方佑樹さんも、すばらしいセッションで観客をわかせた。
ディエゴさんは、チェット・ベイカーのトランペットにのせ「一人酒」といった詩を聴かせる。そして、チェットが儚くささめくように歌うパートでは、観客とともに黙って耳をすまし、ショットグラスを傾ける。ディエゴとチェットによる、こころに沁入る、極上のインタープレイだった。
たいして、永方さんは、チャールズ・ミンガスの太く重いアクースティック・ベースにのせて、『Asian Dream』の任意のページを即興的にひらき、任意の詩行を即興的に高速で読むリーディング。ミンガスの人間的にも音楽的にも強烈な個性と、オリジナリティを介在させない永方さんの非個性が、火花を散らしてゆく。これも、いまだかつてない、ユニークなセッション。
トーク後は、ぼくとレンカさん。沈黙のなかで、観客席から黒革のライダース・ジャケットとサングラスといういでたちのレンカさんが、ゆるやかにたちあがり、踊りでる。音楽はまだない。夜と街のノイズに溶けこんで踊るレンカさんに、ぼくが詩篇「Nomad」を声でとどける。それから、音源をつかい、ぼくがレンカさんの踊りを観ながら即興詩をつくり、レンカさんがその詩の言葉にレスポンスする、初めての「K=A=K=E=A=I」を試みた。
ちぐさの夜のなかを、声と肉体の音叉が生んだ波動がとおりぬけてゆく。「夜の羽衣が やさしく ぼくらの文字をくるんでくれた」というぼくの即興のあとは、レンカさんが、長く響きつづける余韻のように踊りつづける。音絶えた詩のホーン、そのミュートさえ、ポエジーになってゆく。
フィナーレは、レンカさん、詩人のみなさん全員と、ちぐさのスピーカーのまえで挨拶。
観客のみなさんに改めてお礼を。そして、共演してくださった、詩人のみなさん、秀逸なDJを務めてくださったちぐさの笠原ディレクターとスタッフのみなさんに、深く、深く、感謝を。
LPのなかから、ぼくらに力を貸してくれた、ジャズメンたち。日本ジャズの立役者にして「ちぐさ」創業者の吉田衛さんに、こころからの敬意と謝辞を。
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