2021年3月3日水曜日

下諏訪への旅、名湯宿みなとや




 

 注目の日本酒「七賢」の執筆仕事で山梨銘醸を訪ねたあと、ひさしぶりの休暇で下諏訪へ。

 

 おめあては、小林秀雄や白洲正子夫妻、岡本太郎などが好んでかよった老舗温泉旅館「みなとや」さんに宿泊すること。七賢の仕事でもご一緒するデザインカンパニーStoopaさんの勧めもあって。ふだんから一日三組しか客をとらないが、コロナ禍以後は一日一組しか宿泊できない。宿は木造二階建て。田舎の祖父母の家をなつかしく思い出す心地好さ。ぼくしか泊まらないのに、お部屋はもちろんのこと、玄関から階段までぴかぴかに磨かれおり迎え支度は徹底されていた。

 

 風呂は中庭の外湯のみ。お湯は下諏訪でも絹乃湯といわれる、上質の天然温泉。湯槽には白玉石が敷かれてい、雪化粧の庭を眺めながら、ここ半年の疲れをじっくりと癒す。

 

 湯のあとは、新鶴屋の和菓子とお茶で一服、仮眠。

 

 聴きしの夕食も、すばらしかった。古伊万里に盛られたのは、下諏訪の郷土料理。女将さん謹製、諏訪湖のワカサギの煮付けは新鮮でとろっと舌上でほどけるよう。桜肉の刺身も、これほど新鮮な馬肉は初めて。臭みはまったくなく、透明感のある旨味。諏訪湖鶴の升酒がすすんで仕方がない。メインは、すき焼きともいえそうな桜鍋。甘めの信州味噌と太くて甘い下諏訪葱が、とろりとした馬肉とあいまって、升酒をさらにおかわり。

 

温泉と前夜の桜肉が効いたのか、夜明け前に目が冴えてしまう。炬燵にはいりツバメ印のノオトに銀軸のボールペンで詩を書く。夕飯はお腹いっぱい食べたが、朝風呂のあとの、朝食の麦雑炊、焼きおにぎりも絶品でぺろりといただいた。

食事処の壁には、大晦日から正月にかけて句会で滞在した高浜虚子の直筆色紙が、惜し気無くかけてあった。先代のみなとや主が、俳句も嗜む数寄者だったとか。

 

刻を聞き年を忘れて炬燵守る

 

 そんな虚子の句がぴったりの、みたされた滞在だった。 

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