金木犀の花はまだみえないが、なんとなし、あの、黄金の秋の芳香がただよう。
連載エッセイ「旅に遊ぶ心」の仕事で、ふたたび、鬼怒川金谷ホテルに滞在した。エッセイは、『暮らしの手帖』連載でも活躍されている写真家、砺波周平さんとの散文詩のように短い紀行文なのだった。
下記リンクから、ぜひ、ご一読を。砺波さんの美しい写真作品はまさに眼福。
https://kinugawakanaya.com/tabi/vol3/
初秋の長雨が一止みした鬼怒川渓谷は、深緑の葉がすこしずつ水にうすまって黄砂となり、山道の木下闇には水引の惑星直列が紅く灯って、千日香などの秋咲きの山野草がちいさな詩をうたう。
隠れた名史跡、日光杉並木街道を散策しエッセイの題材をもとめたあとは、透明で水のやわらかい川の温泉で、こころと体をほぐす。
それから、携行用のA4版の満寿屋製原稿用紙にペンで執筆。
一息に書き了え、いよいよ、金谷流懐石料理をいただく。今回は、とちぎ和牛スープ仕立てのステーキ、が美味しかった。いつもながら、華やかなサプライズのある和敬洋讃の懐石料理。知る人ぞ知る勝沼の銘白ワイン〈菱山〉とも、よくあった。
ちなみに、鬼怒川金谷ホテルのウェブサイトは、現在、国際ポエトリーサイトをともに鋭意制作中のデザインカンパニー・ストゥーパさんの仕事でもある。
その国際ポエトリーサイトは、いよいよ、来月からプレオープンとなり、始動を予定しています。
次回のブログでネーミングや概要をお伝えできれば。
帰りに、新型コロナ療養から復帰したばかりの担当編集者の方に、JOHN KANAYAのショコラをお土産にえらんだ。ご本人はもとより、ご家族のご苦労はいかばかりであったろう。ホテルからお見舞いの電話をすると、「娘が喜びます」とおっしゃっていた。
というのも、以前、金谷ホテルのショコラをお土産にしたら、その味に感銘をうけた小学生の娘さんが、ショコラティエをめざしはじめたとか。
いまが困難な時代であり、自分が恵まれた仕事をさせていただいていることは、重々、承知している。
けれども、困難な時代、の物語を幾重にもかさね重苦しく消費しているだけでは、人は前にすすめないともおもう。
鬼怒川の秋はひとときの夢だったが、こんな時代だからこそ、ちょっとでも、夢見ようと努めたい。
0 件のコメント:
コメントを投稿