新聞記者、テレビのコメンテーターとしても活躍されている、西村・プペ・カリンさんの新刊『不便でも気にしないフランス人、便利でも不安な日本人』(大和書房)です。
今回は、カリンさんの夫にして漫画家・ジャン=ポール・西さんのイラストがたくさんはいっている。カリンさんの仏日比較も興味深いが、西さんのイラストも、日仏夫婦のちがいや比較が、よく表現されていると思う。もちろん、ユーモラスに。
ぜひ、お手にとってみてください。
さて、「う・な・ぎ、が食べたい!」とせがむ妻を、お祝いの意味もこめて、浦和の老舗鰻屋「中村家」さんにつれていった。
JR浦和駅周辺で鰻を食べるなら、「浜名」か、写真の「中村家」。「中村家」は醤油たれが、甘辛くなく、辛口。かなりドライ。もちろん、鰻は注文してからさばいて蒸し、備長炭で焼く。鰻が焼けるまで五十分ぐらいかかるから、うざくと肝煮をつまみに、ビールとぬる燗を呑んで待つ。
「中村家」に肝焼きはない。肝煮は、生姜と醤油などでさっぱり煮付けてある。じつは、鰻重のまえに蒲焼きや肝焼きを食べるのが、あまり好きじゃない。たとえるなら、メインがステーキなのに、前菜にステーキを食べてしまうような気がしてしまう。ひとりで鮨屋にゆくときも、お造りは敬遠して、ほかのものをつまむ。まあ、人それぞれだとは思うけど。そんなスタイルの、微妙なちがいや比較、意外と面白くありません?。「中村家」さんは、ぼくにあっている。
写真の上鰻重は、二串分の鰻がのっている。都内で食べる三分の二ぐらいのお値段だろうか。おもてはカリっと焼かれていて、身はふわふわ、舌のうえであまく、とけてゆく。
とある鰻屋さんでききかじったのだけれど、鰻の焼きの良し悪しは、皮でわかるのだとか。新鮮で、美味しく焼かれた鰻ほど、ひらいた身をつなぐ皮が、やわらかい。脂もとろっとしている。そうでない鰻は、皮がかたい。厚い。鰻そのものが悪かったり、蒸してから時間がたっていたり、焼き方が下手なのだそう。
「中村家」さんの鰻は、皮がとろっと、箸一本で、すっと切れる。
JRの広告で「川越・さいたま」というのがあって、某女優が鰻を食べているシーンがある。川越までゆかないと、こんな鰻は食べられないのかしらん、と思っていた。でも、あれは、「中村家」の鰻重だったと気づく。
古い日本家屋の店内には、音響がいっさいない。ただ、客からは見えないところに置かれた虫籠のなかで、ほんものの鈴虫たちが元気よく鳴き交わしている。
初秋の音に耳をすましつつ、鰻をほおばっていた。
0 件のコメント:
コメントを投稿