独りきりの夜だったから、ステーキを焼いて食べた。
イタリア人女性に郷土料理を習っていたことがあって、そのとき、ピエモンテの伝統的なステック(ステーキ)の焼き方を教わったのだ。
ほんとうは、藁と炭で焼くのだけれど、オーブンやフライパンでも結構。オーブン?という方もいらっしゃるとは思うけれど、イタリアの田舎のスッテクは低温で焼くのです。
肉は、スーパーの特売品でもよいけれど、厚めがおすすめ。ポークでもよし。ぼくは、この日、伊勢丹のタイムセールで土佐の赤牛、しかも雌の腿肉を手にいれることができた。
焼き方は、かんたん。一時間ほどかけて肉を常温にもどす。脂身が半透明になり、赤身ともどもとろりと艶っぽくなってきたら、塩、胡椒をすりこむ。十五分ほど放置。しっかり常温にもどすのが、ステックを焼くときのコツ。そうでないと、「肉が火傷をしてしまう」のだ。肉の質によって、大蒜をきつすぎない程度にすりこむのもよし。これを、オーブンかフライパンの温度を90~100度にたもちつつ、15分ほど低温でじわじわ焼く。
そのあいだに、塩、胡椒、ワインビネガー、エクストラバージンオリーブオイル、バルサミコ酢でドレッシングをつくっておこう。
肉の表面に透明な肉汁がでてきたら、こんどは、焼けた肉にうすくエクストラバージンオリーブオイルを塗って、オーブンかトースターにいれ、高熱で表面をカリッと焼きあげる。ぼくは、アラジンのトースターをつかいました。
皿に庭で育てた生バジルをしき、うえからドレッシングをかける。ステックには直接かけない。そのうえに2、3センチほどの厚さにカットしたステックをのせ、天日干しの岩塩をまぶします。上質なお肉は、オリーブオイルと塩のみの味付け。ときおり、下のサラダのドレッシングとあえて食べる。
余分な脂がぬけているのに、お肉はジューシー。断面はレアに見えるけれど、しっかり火がとおっています。
日本のステーキは霜降りになった、やわらかくてとろっとした食感が好まれる。海外の、とくにヨーロッパのステーキは、脂の落ちた、しっかり噛み応えのある、噛めば噛むほどジュワッと透明感ある肉汁が口中にひろがる雑味のないものが好まれる。そのほうが、酸味のきれいな赤ワインとあうからだろう。池波正太郎ではないが、日本のステーキは、鮪のトロに味がちかく、酒にあうのかもしれない。
おためしあれ。
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