2017年6月12日月曜日

空蓮房詩個展、ジュディ・ハレスキさんのこと



きたる6/24、空蓮房にてアメリカから来日している女性詩人、Judy Halebskyさんと、日本語と英語によるポエトリー・リーディングに挑みます。

イベントのタイトルは「あなたを未だ知らない」。詳細は、下記、リンクへ。


6/24のイベントは定員がうまりつつあります。お早めにご予約ください。

ジュディは、いま、カリフォルニアで注目されている若手女性詩人。

第一詩集『Sky=Empty』は新人詩人の登竜門である「the New Issue Prize」を獲得。「the California Book Award」のファイナリストともなった。

第二詩集の『Tree Line』(New Issues, 2014)は、彼女が日本留学で学んだ江戸俳諧や能楽、暗黒舞踏の知識が随所に秘められている。

ジュディの『Tree Line』を初めて読んだとき、ぼくは、新鮮なおどろきにうたれた。カリフォルニアはサンフランシスコの対岸にある〝ファンキー〟な都市、オークランドから飛来した女性詩人の詩のなかでは、松尾芭蕉とエミリ・ディキンソンがじつに自在に、言葉どおり、自然に出逢っている。

なんというか、彼女の詩は、いい意味で、これまでのマイノリティー文学やアメリカ女性詩の既成イメージがない。ジュディの文学的な祖父は李白や芭蕉であり、祖母はディキンソンであり、とおい従兄弟に大野一雄がいて、姉はアドリエンヌ・リッチである。そんな、自由自在、広大で風とおしのいい翻訳空間が、彼女の詩言語の奥にひろがっている。

ドクター・ハレスキは、現在、海外客員教授として今年の9月まで、獨協大学で教えられている。オークランドでは、ドミニカン大学で教鞭をとっているそう。カナダで生まれ育った彼女は、トランプ政権とその支持者たちを心底、憂いている。ジュディはとてもオープンで話しやすい。いつも笑顔で、だれをも魅了するチャーミングな人柄だ。

その詩は、アメリカ現代詩の先端をゆく口語表現で書かれると同時に、東西洋の古典にダイヴしながら、詩人=翻訳者の深いたくらみを、緻密かつ優美に織りあげてゆく。見えない、秘めやかな糸で。ジュディの詩は、国家や人種や性別といった地殻をおし流し、自然からなる諸存在と精神の、その自由な根のからまりあいを垣間見させてくれる。彼女のリーディングは自由の根をたくみに声にのせ弾ませてゆく。ブルージーに、ときにラップしたりして。

とはいえ、ぼくは事前に、このすばらしい詩人を知っていたのではないし、だれかに共演をすすめられたわけでもない。ジュディ・ハレスキとの出逢いはまったく予定外、事件にちかい。来日以前もメールのやりとりはほとんどしなかった。ぼくらはおたがいにストレンジャーで、対話やリハーサルをしながら、すこしずつ、知りあいはじめたところだ。

さて、お気づきの方もいるかもしれない。ぼくがとりくんでいる連作詩「Asian Dream」は、ぼくが十代の一年半をすごしたオークランドの記憶がモティーフになっている。ぼくがかつて住んだのは、ウェスト・オークランドのテレグラフ・アヴェニューという通りなのだけれど、ジュディとパートナーのクリスはいま、ぼくが暮らした家のすぐそばに住んでいるのだとか。そんなジュディとぼくが、国籍や人種や母語や二十年の歳月やらをこえて、ともに詩の朗読をしようとしている。不思議な、偶然だなぁ。

空蓮房でのリーディングに、彼女を招待したのは、なぜだろう。

それは、どきどきするような未知を、招待するためだったのかもしれない。

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