東洋大学大学院で教えた学生さんたちが、浦和に遊びにきてくれた。
北浦和の埼玉県立美術館(美術評論家で詩人の建畠晢さんが館長に就任された)と、浦和のうらわ美術館をはしご。「兎」が狛犬の調(つき)神社でお参り、「金木書店」、「武蔵野書店」と古本屋めぐりをしながら、さいごは古民家風茶屋「楽風」(らふ)でお庭をながめて抹茶をすする。ぼくのおすすめコースをコンプリートした学生さんたちと、原稿を終えたぼくがおち逢ったのは、もう、暮れ刻だった。
みなさん、修士論文はほぼかたちになっており、残すは提出と卒業との由。お祝いと忘年会をかねて、行きつけの軍鶏料理屋「田楽」さんに誘った。
奮発して、ペリエ・ジュエの96年をボトルでもらう。「ベル・エポック」の銘にふさわしい、アール・ヌーヴォーの巨匠エミール・ガレの手になる絵付けが美事、きめ細やかな泡だちが特長のシャンパーニュ。
まずは、乾杯。よく冷えた、シルクというか、羽毛のようになめらかなバブルが喉元をゆったり舞い降りてゆく。
料理をいただきつつ、みなさんの修論の概要や卒業後の進路をきく。ブタペストから来日し、谷崎潤一郎で修論を書いたAnitaさんは、帰国するという。出版社での就職が内定しているとか。「国費留学生ですので、もっといい就職ができると思いましたけれど。ブタは、いま、とっても不況で。大学はむずかしい」とのこと。将来は、日本文学の翻訳家になることが夢だとか。
そのアニタさんから、拙詩集『耳の笹舟』のハンガリー語訳を許可してほしいとのオファーをうけた。レポートにも書いてくれたし、空蓮房での個展にもきてくれたから、「All yours」とお応えした。
店主の上甲学さんから「特別に」と、田楽スペシャリテ、絶品「軍鶏レバーの塊」をもらう。男性陣からは、歓声。アニタさんは、エレクトリック・ブルーの瞳を、ただただ丸く凍らせて、仰天したのだった。
ガレが描いたアネモネのボトルは、「ください!」というアニタさんに、さしあげた。
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