2018年2月6日火曜日

神楽坂蕎麦呑み




  装丁家の奥定泰之さんと、早稲田大学で対談したあと、ぼくらはタクシーで一路、神楽坂へ。

 神楽坂は日本蕎麦激戦区といってよい。

 ミシュラン星獲りの「蕎楽亭」をはじめ、「志ま平」、「かくれや遊」など、旧新とりまぜて、話題の名店にことかかない。

 午後の晩い時刻に放免となったぼくらは、とりあえず、とおし営業の店をさがそうということになり、だったら、蕎麦屋、と意気投合した。 
    江戸時代には小料理屋をかねた蕎麦屋の暖簾は、いわゆる縄暖簾ではなく、染めぬきで「そばきり」とあったそうな。往時のそばきりにちかい店はと考えると、
「九頭龍蕎麦」
と思いいたった。

 入店し、まずはビールで乾杯。酒は福井幻の銘酒「雲乃井」、しかも、特別限定純米酒。蔵元吉田金右衛門商店が問屋にくばる年賀酒を、店主がたのんでわけてもらったらしい。なので、ラベルには可愛らしい和犬の画に戌とある。「ぜったいに旨いから、旨いとはいわず、溜息だけついてください」と、店主お墨付き。それにしても、凝った年賀で、蔵元の気概と自信があふれている。

 昼のランチコースをまだたのめるというので、それにしてもらう。

 さきづけは、子鯛こぶ〆、づけ鮪の麦とろあえ、小芋の艶煮。
    椀が、蟹しんじょ。
    珍味が、豆腐味噌漬、へしこ、越前仕立て汐雲丹
‎    天麩羅
‎    蕎麦
    果物

 ぜんぶ、美味しい。が、‎小芋の艶煮は、実のごく周囲だけ濃く煮締めてあり、中身は白い。輪郭も味も栗のようにしっかりとした、濃密な煮里芋だった。
   奥定さんは、汐雲丹に、反応。蕎麦は江戸風ではなく、つゆにみぞれ大根をいれこんだ福井の蕎麦。神楽坂で、あえて、福井。六本木で成功した店だが、仕掛けが、粋だなあ。

   酒食後はちかくの珈琲店にはいり、なおも対談のつづきでもりあがる。北園克衛、空蓮房個展の特装本の企画、そして、夏には入稿を果たしたい第4詩集について。

   結局、対談以後も、四時間ちかくを対話したことになる。奥定泰之さんとは、ここ神楽坂で、どれだけこんな一夕をすごしてきただろう。

   個展のときもそうだったけれど、奥定さんとの酒食と歓談が、いつかふたたび創造の種をむすぶのだから、ほんとうに不思議だし、ありがたい、と感慨をふかめたのだった。


 帰宅してみると、冬の闇を、庭の紅梅白梅が仄明るくふきあげていた。いそがしすぎて、梅が満開になったことにも、気づかずにいたらしい。

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