先日、妻とぼくの誕生日のお祝いに、浦和の名フレンチ「アメリ」さんにいった。あの映画『アメリ』をイメージした、小体だが、とても瀟洒なレストラン。お料理はオーソドックスなフレンチを基に、けばけばしくない範囲でかならず新鮮な変化をくわえてくる。お味は都内の有名店レベルだが、お値段は、リーゾナブルだ。ヨーロッパの街には、こうしたセンスがよくて入りやすくて美味しい、人気の隠れレストランが石の壁のむこうにひとつやふたつはある。そんなお店が、浦和にあるのが、うれしい。
さて、当日は、フランスはボルドーの友人、エティエンヌさんとルチルさんからいただいたワインを持参。ボルドーの銘醸地Chateau Pierrailの2012年、スプリエール・コントワレ(特級)。味も馨も繊細さを秘めつつ、超重厚かつ超芳醇。これぞ、フルボディ、といったいかにもボルドーらしい赤だ。シャトー・ラトゥールで働くルチルさんがえらんだワインだが、いわく、2012年のスプリエールは、地元ボルドーのワイン業者のあいだでも大変話題になったのだとか。
アメリさんでは、ワインにあわせたコースを頼む。まず、シャンパーニュで乾杯。おなじ月生まれの妻と、おたがいの誕生日を祝う。
ぼくのほうは、前菜につづき、若鮎のコンフィ。持ち込んだボトルにかえ、魚料理がマスのポワレ、肉料理がマグレ鴨のロースト、デゼール二皿。マグレ鴨は、フォアグラ用の鴨で、とても上質な脂がのっている。ゆえに味もかなり濃厚。鴨を食べやすくするため、アメリさんではレッドソースのベースにレモンをつかっているのだとか。ここらあたり、アメリさんらしいアレンジ。
ところが、このマグレ鴨をしも、ワインのほうがまだまだ味香の余白、振り幅がある。果たして、このあまりにストロングなボルドー・ルージュに拮抗できる肉料理は、あるのだろうか。芳醇な味香のせいか、ワインを呑む妻のテンションも、なんだか、おかしい。これは、本場ボルドーのジビエくらいでないと、マリアージュにはならないのかも。よし、また、ボルドーにいくぞ。
などと、大変、愉しくディナーをいただいた。いいお酒だったから、ボトルを一本あけても、じぶんが酔っていることに気づかないほど気分よく酔えた。お料理も、ヘヴィなポーションを感じさせず美味しかった。
でも、帰宅しても、あまりにお腹がいっぱいで、眠れない。未読のまま書架にあった青山文平氏の時代小説『春山行き』を一冊読み了えるころ、やっと、まぶたが重くなりはじめたのだった。
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